2016年11月29日火曜日

国際政策を支える「人」への眼差し-国際政策担当マネージャ、ロアン・ブレイブロックさんに聞く

いよいよ今週末から、生物多様性条約第13回締約国会議が、メキシコのカンクンで始まります。CIの代表団を取りまとめるのが、ロワン・ブレイブロック。今井さんがインタビュー記事を書いてくれました。

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生物多様性や気候変動といった国際交渉の政策マネージャとしてコンサベーション・インターナショナル(CI)本部に勤務するロワン・ブレイブロックさん。パリやモントリオールと交渉現場を渡り歩きながら環境政策に情熱を燃やす彼女の原点は「人への関心」にあるそうです。大学で社会学や文化人類学を学び、アフリカで開発支援等のフィールドプロジェクトに従事した経験を持つ彼女は、CIの政策担当者の役割を「多分野の関係者の参画を促すファシリテータ」と感じているのだとか。その背景にはどんなストーリーがあるのでしょう?



「人」を知ることから、環境問題にアプローチする
西海岸ワシントン州に生まれ育ったブレイブロックさんは、幼い頃から環境やサステナビリティといったことに興味を持ち、次第に「人々を動機づけるものは何か」、「何故人は、そのような行動するのか」ということに関心を持つようになりました。そして、米国最古のリベラルアーツ大学のひとつ、ミドルベリー大学で社会学や文化人類学を専攻すると、セネガルで保健や人権の分野に取り組むTostanというNGOでフィールド活動に従事しました。そして大学卒業後はPeace Coprs(平和部隊:米国政府による途上国へのボランティア派遣組織)に参加し、マダガスカルで環境ボランティアに携わります。「開発の課題について深く知るためにも、地域のコミュニティに入り、フィールドで活動したいと思ったんです」。農村で持続可能な農業や漁業を進める小プロジェクトに携わる上で役立ったのが、文化人類学で学んだ知識です。「コミュニティで、本当にたくさんの人たちにインタビューをしながら、プロジェクトを進めていきました。環境問題が何故起こるか、破壊や保全といったテーマにどう向き合えばいいか。そういう本質的なことから考えていくことが、現場での活動に必要だったのです」。ブレイブロックさんはその後、米国に戻ってCIで働く道を選びます。

Peace Corp時代のブレイブロックさん
  
途上国の開発現場から、国際政策へ
ワシントンDCのCI本部でブレイブロックさんが得たポジションは、フィールドプログラムのコーディネータでした。この他、CIが世界各地で展開するプロジェクトのファンドレイジングやコミュニケーション支援に従事しながら、政策に関する専門的な知識を得たいと、ブレイブロックさんはジョンズ・ホプキンス大学の大学院で環境政策の修士を修得し、政策担当者としてのキャリアを歩み始めます。「環境分野で働く人たちには、いろいろなバックグラウンドを持っている人が多いですが、その多様性こそが強みだと思うんです。環境を守りながら開発を進めるにはどうすればいいか、よりよい保健状況を得られるようにするにはどうすればい
いか。そういったことを考えて行く上では、総合的な見方を持つことが必要ですから」。

Peace Corp時代のブレイブロックさん

SDGsは異なる国際課題を総合的に捉えるチャンス
2015年はSDGs(国連持続可能な開発目標)や気候変動パリ合意が採択されるなど、国際環境政策に大きなインパクトを与える年となりました。「SDGsは開発と環境、両方をカバーするばかりでなく、生物多様性条約の愛知目標といった具体的目標もカバーしている、とても注目すべき国際合意です。たくさんの目標があるからわかりにくいという声もありますが、課題について総合的な視点からアプローチする上ではとても有効だと私は考えています。例えば、”開発”の名のもとに、酷い公害や森林伐採といったことが起こる状況は、その国にとって、本当によい”開発”の実現につながっているのか。そういったことを総合的に考えていく上でも、SDGsは役立つのです」。

自然が解決策であることを、パリ合意は明確に示した
2015年のパリ合意の採択を、ブレイブロックさんは「難しい状況の中ではよい成果にたどり着けた」と振り返ります。「CIが打ち出していた、“気候変動に対する自然にもとづく解決策(Nature Based Solution to Climate Change)”が受け入れられたことは嬉しいことでした。自然は気候緩和の解決策の30%に貢献すると言われています。例えば熱帯雨林、マングローブを使った炭素隔離は、多くの技術的解決策に対する代案となりうるのです。CIは、こういった自然が気候変動に対する解決策になるというメッセージを”Nature is speaking”という映像シリーズで発信しています。多くの分野で、このような視点が受け入れられることを期待しています」。





国際政策を、現場での活動へ結びつけてゆく
このような国際合意が、各国の現場に活かされるしくみをつくることが大事だと、ブレイブロックさんは考えています。「CIは世界25カ国に現場を持っています。これらの国々が政策判断をする上で必要なデータや解析情報を提供することも、私たちの活動のひとつです。科学的情報を政策担当者に伝えやすくするため、グラフィックをつかったコミュニケーション素材を制作したり、ワークショップを開催するなどして、各国の文化背景に合わせたツールを提供することを大切にしています」。CIは各フィールド、現地コミュニティで活動する団体とパートナーシップを組んでいますが、その際に心がけているのは「現場を尊重するために、複数のオプションを提供する」ということ。「私たちCIは、国際交渉や小さなコミュニティまで、いろいろなフィールドで活動しています。だからこそ、所有しているさまざまな情報を、その現場に合わせて活用する上で最良の術を見出そうとしているのです」。

政策担当者は、関わる多様な人たちに働きかける「ファシリテータ」
課題解決のためには、科学者や政策立案者の他、地域住民や先住民族、ビジネスセクターや地方行政など、多くの人たちの参画が大切だというブレイブロックさん。CIの政策担当者としての自らの役割を「関連する人たちの参画をファシリテートすること」と位置付けます。「生物多様性条約や気候変動枠組み条約といった国際的なフォーラムはとても広くて深く、扱う情報量も多いため、関与の糸口を見つけるのが難しいです。ですから、政策担当者として広い視点を持ち、それぞれの課題に対して、CIの専門家が、どのような観点から関われるかということに着目して彼らに働きかけることが大事です。それぞれのメンバーがどのような情報とつながっているかを知ることも大事。つまり、日々のコミュニケーションが鍵になると思っています」。


「国際政策の成功を決める鍵も、日々のコミュニケーションにある」 
生物多様性条約科学技術助言補助機関(SBSTTA)会合会場
(モントリオール)にて
情熱を持って挑戦し続けられるCIのチームが好き
最後に、ブレイブロックさんに、CIでの仕事で最もエキサイティングと感じることを訪ねてみました。「本当に多くの、知的で情熱に溢れた人たちとともに仕事をできることです。例えどんなに忙しい日々を送っていても、どのスタッフも、自分の取り組むことにとっても情熱を持って取り組んでいます。もちろん疲れている時も、うまく行かないこともありますよ。でも、いつだって挑戦し続けていけばいい。CIの仲間たちといると、そういう気持ちになれるんです」。


ロワン・ブレイブロック(Rowan Braybrook) 
コンサベーション・インターナショナル本部の持続可能な開発政策マネージャ。ワシントン州出身。ミドルベリー大学在住中に、セネガルで教育や人権、保健政策等の分野に取り組むTostanというNGOに参画。卒業後、米国政府による途上国へのボランティア派遣組織、Peace Coprs(平和部隊)に参加してマダガスカルで環境保全等のフィールドプログラムに従事する。帰国後、コンサベーション・インターナショナル本部にてフィールドプログラムのコーディネートを担当。政策担当を手がける傍、ジョンズ・ホプキンス大学で修士を取得、現在に至る。

取材・執筆 今井 麻希子(Yukikazet)

◆スタッフインタビューは、ライターの今井麻希子さんに取材執筆を頂いています。シリーズの今後にご期待下さい!

2016年11月1日火曜日

“サステナブルコーヒー”とはなんだろう?


こんにちは。CIジャパンインターンの東海林優衣です。今回はCIジャパンのイベントやセミナーでも最近取り上げられた「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」に関するの記事をCI本部のブログから選びました!名前を聞いたらなんとなく想像がつく方も多いかもしれませんが、実際に何をどう行っているのかまではわからないと思います。私自身も先日東京ビックサイトにて行われた「SCAJ ワールド スペシャルティコーヒー カンファレンス アンド エキシビション 2016 (このときのブログ記事はこちら)でのCIジャパンのセミナーに参加してから「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」がどういうもので自分に何が出来るか、知ることができました。そしてこのブログ記事からも、コーヒー栽培適地やコーヒー生産者の現状、このままいくとコーヒーの存在がどうなっていくかなどのことを知りました。現在、コーヒーの需要は上がっています。しかし、生産者の中にはコーヒー豆作りをやめてしまう人も少なくありません。
これを機に、身近なコーヒーという存在に意識を向けて頂けたら幸いです。

本ブログ記事は929日に投稿されたCI本部のブログ記事を和訳したものです。


コーヒー豆を手に持つ生産者(© Thomas Muller)


Editor's Note:「気候適応」から「ブルーカーボン」、「ランドスケープアプローチ」、「生態系サービス」など、こうした環境用語は現在どこでも見られます。CI本部のブログ「ヒューマンネイチャー」では、そうしたよく見られる業界言葉についてWhat on Earth?シリーズで解説しています。

今日は、コーヒーの日ということで(アメリカでは929日はコーヒーの日でした!) “サステナブルコーヒー”を取り上げます。この言葉をどこかで聞いたことがあるかもしれませんね。でも説明するのは難しいと思います。“サステナブル・コーヒー”とは何か?なぜそれが大事なのか?ということについてお話ししたいと思います。

このブログは105日に投稿されたannouncement of McDonald’s  joining the Sustainable Coffee Challenge.をアップデートしたものです。

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Q: まず、“サステナブルコーヒー”とは何でしょうか?
A:一般的に定義されているのは、自然を守りながら、かつ、生産者の生活環境をより良くする方法で育てられるコーヒーのことです。

Q: 待って下さい、コーヒーは自然を破壊するようなやり方で生産されるのですか?
A: はい、できます。コーヒーは、世界に残された熱帯雨林のほとんどが含まれる熱帯地域でしか育ちません。コーヒー農家がコーヒー栽培地を拡大したいとき、一番簡単な方法は辺りを囲む木々を切ることです。その上、コーヒーは急斜面で育ちます。もし、適切な管理が施されなければ、コーヒー栽培は浸食や水路の沈降を引き起こす可能性があります。コーヒーの加工にも水を大量に使用し、排水によって川などを汚染することもあります。これらが同時に起こると、すぐに持続不可能になってしまうのです。

 Q: なるほど。しかし、生産者の暮らしがどう関係するのですか? 
A: 12000万人コーヒー農家のうち、一部の人々は完全にコーヒーに生計を頼っています。大半の人々は小規模農家や、農園労働者です。他の産業と同じく、コーヒーの買い手はできるだけ安く買い、高く売りたいのです。しかしながら、不安定な市場のせいで、コーヒー生産者や農園労働者には損害が出ています。そして、市場が低価格を維持していこうとすると、労働者を搾取することに繋がります。このようにコーヒーが低価格であることは、森林の伐採や悪質な害虫駆除剤の使用、そして児童労働などのように、安い労働力に頼ることを強いることになります。
全ては利益を生みだすために…
Q: それはよくないですね。私は高くないコーヒーが好きですが… 
A: 私たちみんなそうですよ。しかし、もしこれらのことがすぐに変わらなかったら、私たちは今後途方もなく高い値段を払わなければいけないことになります。

私たちが買うコーヒーは、コーヒーに生活を頼っている無数の人々をサポートしているのです。(© Cristina Mittermeier)
Q:どういう意味ですか?
A: コーヒーは世界で最も取引されている熱帯産業商品であり、中国やインドのように伝統的にお茶に恵まれている場所での需要も増えています。この需要の増加はコーヒー生産を新たなエリアへの拡大へと押し進め、森林伐採を導くかもしれません。森林破壊は炭素を木々の中に留まっていた炭素を大気中に放出させます。持続可能なコーヒーの生産拡大は実際に気候変動に影響を及ぼしています。ひるがえって、コーヒーは次々に気候変動の影響に悩まされることになるでしょう。そして、そのような森林が与える自然のサービスに頼っているコミュニティも同じように悩まされることになるでしょう。

Q: コーヒーは気候変動によって被害を被るのですね?どのように?
A: 気候変動によって気温と雨量のパターンが変わると、特定の気候を必要とするかつてのコーヒー栽培適地は、もう二度と栽培に適さなくなるでしょう。この問題は既にメキシコのコーヒー栽培地域など、いくつかの農家では気候変動に影響されにくい(そして、市場によって価格変動の影響を受けにくい)他の作物に切り替えているなどの問題が起きています。これはコーヒーの供給を減らすだけでなく、長い目で見れば、コーヒー価格上昇させることにつながります。将来のコーヒー不足も予測されます。

Q: わかりました。‘将来“とはどのくらい近い将来なのでしょうか?、そして何が起こるのでしょうか?
A: なんとも言えませんが、コーヒーの樹は20年から30年間かけて成長するので、気候変動の影響によって、それまでに生産者が農園の経営存続を断念せざるを得なくなるかもしれません。そうなれば、サプライチェーンが破壊され、長期的な経済的利益の損失につながるでしょう。
Q: コーヒー栽培を断念?他に生産者が出来る事はないのでしょうか?
A: コーヒー生産者の選択肢には限りがあります。彼らは農園をさらに高い標高の、平均より気温が低く、よりコーヒー生産に適した場所へ移すか、コーヒーをもっと標高の低いところで育つカカオのような作物に切り替えることができます。もしくは、古くなった木や、病気になったコーヒーの木を、病気に耐性のある品種に変え、良い農園管理方法、実践事例を元に、害虫を駆除し、高温や雨量の変化にしばらく耐えるしかありません。

Q: 誰かが支援しているのでしょうか?
A: 多くの会社や政府機関、市民社会、組織などが既に何かをしていると聞けばあなたは喜ぶでしょう。しかし、状況はさらなる行動が必要とされています。今、最も大きな取り組みの一つは「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」と呼ばれているものです。コーヒーを世界最初の持続可能な農産物とするために、コーヒー業界関係者
-生産者、貿易業者、焙煎業者そして小売業者など- がサステナブルなコーヒーへの需要を高める(そして更なる支援を増やす)ために集まった、大きなイニシアティブです。
Q: すごく野心的ですね。どのように実際に業界全体の持続可能性を達成させるのですか?
A: 聞いてくれて嬉しい質問です。サステナブルなコーヒーかアンサステナブルなコーヒーを買うしかないという選択肢の範囲では、持続可能性へ大きな需要を作るのは非常に大変で協力が必要でしょう。しかし、既に示したように私たちは出来る事があります。15年間以上、CIはスターバックスと共に彼らのサプライチェーンにおいて、倫理的な調達へ向けて協働してきました。そして今日、彼らの調達する99%のコーヒーは、長期的に生産性を改善させるような認証された持続可能性基準に則ったものです。

CI
の専門家、シニア戦略アドバイザー、バンビ・セムロックは言います。「ここまでに至った私たちは、今後コーヒー業界全体をどのように持続可能へ転換していくか、より大きな枠組みで考えました。それが”サステナブル・コーヒー・チャレンジ”の開始へとつながったのです。」
Q: そうですか。チャレンジの状況はいかがですか?
A: 2015年の12月に開始して以来、「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」はルワンダとメキシコの政府を含む48組織を含むまでに成長しました。
「“ひとつのコーヒー豆の袋が買われるごとに一本のコーヒーの木を植える”というスターバックスのキャンペーンから、“2025年までに持続可能な調達を100%にする”というコミットメントを発表したファーマーズ・ブラザース、農業生産の改善や、融資プログラムの提供、そして生産者のキャパシティとスキルの改善を約束しているルワンダやメキシコの政府まで、それぞれが大きな影響を作るためにさまざまな努力をしています。」とセムロックは言います。

2016105日、新しいパートナーがサステナブル・コーヒー・チャレンジに参加しました。それは、マクドナルドです。マクドナルドは2020年までに全てのコーヒーを持続可能な調達にする計画をしていると発表しました。そして、ゴールを達成するために、サステナブルフレームワークをCIとサステナブルコーヒーチャレンジと共に話し合うワーキンググループにも参加しています。マクドナルドの事業サイズとスケール、彼らの素晴らしい世界的なブランドの認識、そして行動は、コーヒー分野において多大な影響を与えるでしょう。マクドナルドはその旅路を世界にシェアするだけでなく、何十億もの顧客になぜ持続可能性が問題なのかを教えることになります。マクドナルドの行動の影響は本当の変化を作る中で大きな助けとなり、極めて重要となるでしょう。

Q: それは素晴らしいですね。私たちには何ができるでしょうか?
A: 注意を払いましょう。買う前にラベルを見て、注意して購入しましょう。あなたのお気に入りのコーヒーショップや小売業者がどのように持続可能性に関与しているか探し出しましょう。sustaincoffee.orgへ行って、サステナブルコーヒーチャレンジのメンバーを探し出し、そして彼らの努力を支え、助けていきましょう。

投稿 CIエディトリアル・ディレクター、ブルーノ・ヴァンダ・ヴェルデ

翻訳協力 東海林優衣