アジェ6-熱帯林保護に向けた大きな一歩!?

Avoided Deforestationに関する議案6は、結局その後オープンなCGミーティングが開かれることなく、非公式(非公開)の交渉を経て、COPでの採択に付される決議案が合意されました(http://unfccc.int/resource/docs/2005/cop11/eng/l02.pdfを参照のこと)。決議案の概要は以下の通りです。

1.COPは、PNGおよびコスタリカによる提案および今回の会合で得られた各国の主張に注目する
2.COPは締約国および登録オブザーバーに対し、2006年3月31日までに、森林破壊の阻止から削減されるGHG排出について、科学的・技術的および方法論に関する意見、そして政策的・建設的インセンティブに関する経験や情報を提出することを求める
3.COPは、2006年5月に開かれるSBSTA24(科学および技術の助言に関する補助機関会合)で、上記2.で提出された意見について協議を行うことを求める
4.SBSTAは、27次会合(2007年12月)で、この件に関する協議結果と提案を報告する
5.COPは、SBSTA25(2006年11月)の前にこの件に関するワークショップを開催し、その検討内容をSBSTA25で協議することを事務局に要請する。ワークショップでの検討内容は、SBSTA24において検討される

この決議案、12月7日付のブログでレポートした、CG議長案と比べると、いくつかの変化・交渉の舞台裏が見えてきます。CGにおける対立点のひとつが、この件をSBSTA(科学的、技術的なことのみを議論する)だけか、SBI(実施に関する補助機関)において「政策的・建設的インセンティブ」なことも議論するのか、という点でした。政策的・建設的インセンティブとは、つまり先進国から熱帯林の破壊防止に取り組む途上国への資金の流れをつくるか、という意味なのですが、これに強硬に反対していたのがUSでした。一方で、EUなどの前向きな姿勢に支えられた途上国はSBIでの議論を強硬に主張していました。それから、この議論を最終的にCOP(条約)でするのかCOP/MOP(京都議定書)でするのか、というのも大きな論点で、これもUSが強硬にCOPでの議論を拒否してきました。これは、2012年以降の先進国の将来コミットメントにも関わりが出てくるためです。最終決議案を見る限り、SBIでの協議は保証しないものの政策的な議論の扉は開き、その換わりCOPまたはCOP/MOPでの議論の場の確定は先送りした、と考えます。政策的な内容の議論への道が開かれたことは、熱帯林の破壊という気候変動はもとより生物多様性にも大きな影響を与えている火急の問題に取り組む国際的な枠組みへの道が開かれる可能性があるということで、前向きに評価したいと思います。

一方で、もうひとつ議論になっていたのが、いつまでに協議の結論を得るのかという点ですが、これについてはなるべく早い時期での結論を期待していましたが、2年間の議論ということになってしまいました。これは、十分な科学的・技術的議論の必要性を主張していた日本政府の意見も反映されているのかなと思わざるを得ません。G77&中国は、「2年もかけて議論してては、結論が出た頃には森林がなくなってしまう(インドネシア代表団の言葉)」と主張していましたが、残された時間が少ないことへの合意が得られなかったのは、非常に残念に思います。

このように、評価される部分、残念な部分が複雑に入り混じった決議案になったという印象ですが、途上国の熱帯森林の破壊からのGHG排出への対策の重要性が認識され、その解決に向けた技術的・政策的な議論が国際交渉の場で公式に始められることが決まったということは、大きなブレークスルーだったと思います。そして何よりも、途上国側からの自主的な削減の取り組み(少なくともスタートとしては)の提案がなされ、それがCOPで合意されるということは、非常に大きな意味を持つといえます。この議案の提案国であったパプアニューギニアの交渉担当者は、EU、US、ブラジル、カナダと並んで、日本の支援が、この議案での合意に至ったと述べてはりましたが、そのような背景もあったのではないかと思います。COP総会で、この決議案が速やかに決議されることを願っています。

(by Yasu)


小池大臣の演説

ハイレベルセグメントでは、昨日に引き続き各国大臣級の演説が行われています。環境省の小池大臣は今日(8日)午前中に日本の気候変動問題への取り組みと考え方について演説を行いました。

冒頭ではクール・ビズ&ウォーム・ビズやトップランナー方式などの国内の取り組みを紹介し、日本が6%削減に向けて真摯に取り組んでいることをアピールしました。また、将来世代によい地球を残すためにも気候変動問題に対し、先進国は義務を果たすとともに将来的な途上国の協力が重要であると述べました。最後に、京都議定書を実効あるものとするためにはしっかりとしたコンプライアンスが鍵であると語っていました。ただし、個別の交渉では、罰則規定の導入に関して日本は渋っている状況があり、しっかりした日本がどのような方法でしっかりしたコンプライアンスを確保するのかは、明確でなかったように思います。私達は罰則規定に関する協議の流れを追ってはいないのですが、明日最終日のCOP/MOPで、何らかの決議がなされるか、注目したいと思います。

しかし、各国大臣の演説を聞くと各国、とくに先進国と発展途上国の立場の違いが再確認できますね。先進国は、全世界での気候変動での取り組みが大切であることを唱える一方、発展途上国は、残された自国の自然環境を残し、脆弱性を克服して持続可能な発展をするためにはCDMや融資のシステムが不可欠であると訴えるところが多かったように思います。その点、日本の演説は、日本の考え方が具体的に伝わっていないような、そんな印象を受けてしまいました。今日はYasuさんが「Avoided Deforestation」について上で書きましたが、長い停滞の後このCOP11でようやく一歩を踏み出したこの議論が新たな南北間の資金の流れを持続可能な発展に沿う形で実現できるのではないかと思います。

最後に、会場の雰囲気がどんなだったか少しお伝えしておきます。総会をやっている会議場が広いこともありますが空席が目立ちます。それに加えて大半の人が打ち合わせをしていたり、パソコンに向かっていたり・・・。おまけに、議長まで途中で交代していましたし。いくらセレモニー的意味合いが強くてもこんな中で演説する大臣達も切ないなぁと思うとともに、様々な事柄が同時進行している国際会議の慌しさを再確認しました。

いよいよ、明日はCOP11及びCOP/MOP1の最終日です。私達が追っているCOP11議案6項”アジェ6”は無事プレナリーで決議されるのでしょうか?非公式協議が続いているため動きが表面化しない京都議定書3.9条の議論はどんな展開を見せるのでしょうか。がんばって最後までお伝えしたいと思います。

(by Yoshi)

【写真は、COP・COP/MOP合同総会(プレナリー)で演説する小池環境大臣】

P.S. 先ほど、急遽3.9条(将来コミットメント)に関するCGが開かれ、明日COP/MOP1に付される決議案が合意に至りました!といっても、アジェ6とちがって、まだ意見の隔たりは大きいらしく、CG議長のDavidによればCGレベルでは、ここまでが限界で、あとはハイレベルでの交渉に委られることになったとのことです。まだ実際の決議案が手元にないので詳しい内容は分かりませんが、共同実施に関する部分(?)などでロシアが意見の相違を持っている模様です。明日の最終日、終わるのは何時になるのでしょうか!? (by Yasu)

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