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5月, 2012の投稿を表示しています

気候変動枠組み条約/UNFCCCボン会合:ボン会合総括―COP18 / ドーハに向けて

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気候変動プログラム・ディレクターのYです。2週間続いたボンでの気候変動枠組み条約交渉が5月25日(金)に終了しました。一番最初のブログにも書きましたが、今回は以下の4つの交渉が同時並行で進みました。 1. 「気候変動枠組条約第36回補助機関会合(SB36)」 2.「条約の下での長期的協力の行動のための第15回特別作業部会(AWG-LCA15)」。 3.「京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する第17回特別作業部会(AWG-KP17)」 4.「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」
この中で、特に困難を極めたのが4の「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」でした。特に、ADPに関しては、2週間かかってやっと議長の選出とアジェンダの採択で終わった、という結果です。アジェンダの内容も、当初の数ページにわたるCOP17決議に基づく事務局案を、たった1ページに簡素化し、全て「COP17決議に基づき議論していくものであり、如何なる先入観も持たない」という脚注付きにすることでの合意に至りました。これは、何日も費やして実施された非公式会合において、各国が激論を交わし、やっと合意に至ったアジェンダです。そのアジェンダですら、ADPの本会合では、ベネズエラが脚注の扱いについてさらに改訂の扱いをレポートに含めるように要求するなど、混乱は最後の最後まで続き、やっと採択に至りました。  議長の選出問題に関しての難航をまとめます。そもそも、今回はノルウェイ、インド、トリニーダ・トバゴが各地域から選出され、ADP議長に立候補していました。インドはCOP17のダーバン合意の採択の際、最後まで採択を拒否していた国であり、同じくADPをブロックしてきた中国の強力なバックアップを受けています。トリニーダ・トバゴは、島嶼国連合(AOSIS)に属する国として、より野心的にADPを推し進めていくことが他の途上国から懸念される理由となっています。このように、主に途上国からあがってきた候補国が極端であったため、いくら非公式会合を続けても折り合いがつかなかったわけです。  結局、議長問題は、やっと以下のように整理されました。 ・2012-2013年:ノルウェイ、インドが共同議長を務める。ロシアが報告担当官を務める。 ・2013-2014年:トリニーダ・ドバゴに加え、付属書Ⅰ国(OECD加盟国+移行期…

国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:キーワードは共通だが差異ある責任と衡平性

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気候変動プログラム・ディレクターのYです。昨日の内容があまりにマニアックだったので、今日は概論です。今回暗礁に乗り上げているADPですが、結局昨日20時~予定されていた全体会合は、開始30分前にキャンセル!出るつもりで別件で日本政府の方と情報交換をさせて頂いていた私は、全くこの通告に気づかず、会場に行こうとしたら戻ってくる人の波にもまれまくり、聞いたところ「さっきキャンセルになったよ、まだあの部屋の中でクローズドで話をしていて、まとまっていないよ」と言われました。現地時間24日(木)の朝、状況は変わらず。議長も決まっていません。UNFCCCのウェブサイトには、議長の選挙を実施するという南アの強行案が発表されていますが、これは前代未聞の出来事であり、選挙の結果選出された議長の元、会合がスムースに進むとも思えません。今日もぎりぎりまで、非公式の交渉が続けられ、選挙案は最後の一手となるのではとの憶測です。 なぜ、今回、昨年決定したはずのダーバン合意を進めるにあたって、このように混乱が生まれているのでしょう?一つには、議長国に名乗りを挙げている国の問題があります。それぞれ、公平に議長を務める上で他の国々から問題視されている国が立候補しています。また、今まで開催されてきた暫定的なADPの全体会合では、途上国の多くの方の発言に含まれる、2つのキーワードがあります。それは、「共通だが差異ある責任(Common but differentiated responsibilities)。」と「衡平性(Equity)」。一つ目は、気候変動は産業革命以来、化石燃料を使い経済成長を続け発展を遂げた先進国に多くの責任がある。だから、気候変動という同じ目的に立ち向かう場合でも、先進国と途上国の間には取り組み方や目標に違いが認められるべきであり、先進国は途上国への支援を実施すべきという、主に途上国側の主張です。 2つ目のキーワードが、「衡平性(Equity)」。先日、NGOの皆さんと集まり、日本からの記者さんにブリーフィングをした際、途上国が言っている「衡平性(Equity)」とは、「公平(fairness)」と、いったい何が違うのか。公平と訳しいてはいけないのか、との質問が出ました。確かに、辞書でも、Equirtyを「公平」と訳す例もありますが、国連文書のように法律的な利用の場合は「衡平性」…

国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:REDD+/SBSTA決議案

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気候変動プログラム・ディレクターのYです。本日はとってもマニアックな内容ですが、日本でREDD+を追っていらっしゃる皆様のために、ご報告します。ずっとクローズドのまま非公式会合を重ねていたREDD+(途上国の森林の減少と劣化に由来する排出の削減)。本日、REDD+担当のSBSTA(科学補助機関会合)議長より、やっと議長案が公開されました。
(写真: 尚、その後修正が続き、最新版はUNFCCCのリンクにアップされています↓)
http://unfccc.int/resource/docs/2012/sbsta/eng/l09.pdf

ここまで来るのに、何晩も眠れぬ夜を過ごし、交渉されてきた各国のREDD+交渉官の方々は、皆さん目が落ちくぼみ、疲れ切った様子。「今夜は飲んではじけるわよ~!」という某国の交渉官からの御誘いメールも来ています。一方、ADPのプレナリーが全く整理されないまま、夜8時~10時開催となり、私は折角のREDD+交渉官の飲み会に出れそうにありません・・・・(涙)。
REDD+の交渉状況を追ってらっしゃるマニアック(?)な方もいらっしゃると思いますので、SBSTA議長案(あくまでも案で、まだ細かい改訂が加えられる予定)をサマリーします。明日以降開催されるSBSTAの本会合にて、採択の是非が決まります。
1)     REDD+のMRV:引き続き方法論的なガイダンスの検討を続け、ドーハで開催される第37回SBSTAで決定、COP18での採択を目指す。 2)     森林劣化の要因(ドライバー):同上 3)     セーフガード:COP16の決議文書に基づくセーフガードの情報に関して、各国が透明性・一貫性、包括性があり効果的なシステムを開発するプレゼンテーションの機会を検討し、第37回SBSTAでも引き続き検討しつつ、第39回SBSTAで決定する。(来年末です!)。 4)     参照排出レベル/参照レベル:第37回SBSTAでも引き続き検討しつつ、第39回SBSTAで決定するが、COP18で進捗状況と決議案を報告する。先に決定するMRVの方法からの技術的ガイダンスを要する。 5)     COP16決議に基づき、REDD+が途上国の適応ニーズに配慮する活動となることを目指すことを認識する(←これはCIとしては素晴らしい成果!)
この他、別添文書として、今後話されるべき課…

国連気候変動会議/UNFCCC ボン:サイドイベント②「気候変動の緩和と適応に貢献する農業」

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気候変動プログラム・ディレクターのYです。現地時間の21日(月)に、団体が参加する2回目のサイドイベント「農業:気候変動への適応、排出削減、社会的目標達成のチャンス」が開催されました。実は、今回の会合で、農業は大変ホットなトピックです。セクター別アプローチの交渉スロットに農業が入り、気候変動枠組み条約の下でも農業が協議されるています。しかし、「農業は適応策とはなり得るが、気候変動の緩和にはならない」という主張がほとんどであり、「気候変動の緩和」につながる、との見解は少数派です。その背景には、アフリカ諸国をはじめとする爆発的な人口増加がある中、食糧補給のためにも、農業はまず途上国の人々を支えていくために必要不可欠な産業として、気候変動の影響に適応することから検討しなければいけない、という考え方が途上国側の主な主張です。 一方、途上国の現場で活動を展開するCIは、農業はもはや適応策の枠を超え、気候変動の緩和にも貢献するように計画的に実施されるべきであると考えています。地元住民との入念なコンサルテーションに基づく計画的な土地利用に基づき、先住民族や山岳地帯に住む人々への能力向上支援とともに農業を計画的に進めれば、食糧の補給と気候変動の緩和の双方に貢献することが可能であるからです。このためには、先進国をはじめ、NGOや途上国間での知識の交流や能力開発支援が重要です。 本日のサイドイベントでは、まずCIコロンビア・プログラムのアンヘラ・アンドラーデが、コロンビアの標高の高い山岳地帯の生態系を守りながら、地域の農業の気候変動への適応策を支援する実践現場からの報告を行いました。

(写真:サイドイベントで発表するCIコロンビアのアンドラーデ)
続いて、他のNGO団体より、農業における適応と削減を統合する実践活動や、土地利用活動の選択に関する政策的アプローチの重要性等が続々と発表されました。しかし、前々回のブログでも報告したサイドイベントに引き続き、何と、今回の農業のサイドイベントも、農業のSBSTAでの交渉スロットとばっちり重なってしまいました・・・。たくさんの交渉官の方が楽しみにして下さっていたのに。 それでも、SBSTAの交渉が終わってから続々とサイドイベント会場に駆けつけて下さった、日本政府を含む多くの政府の農業担当交渉官の方々より、「大変重要なサイドイベント」というご意…

国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:迷走を続けるダーバン・プラットフォーム

気候変動プログラム・ディレクターのYです。REDD+のドラフティング・グループはクローズドで延々と続いているため、私たちNGOは入ることができません。一方、先週より議長が決まらずアジェンダすら採択できない「ダーバン・プラットフォーム作業部会(ADP)」が深刻な状況に陥っています。  先週の土曜日に、2回目のADPが開催されました。この時点でもまだ議長の調整がつかず、決定していなかったため、現COP議長である南アの方が副議長となり、せめてアジェンダだけでも先に採択しようと努力されました。そこから、延々と3時間半、アジェンダ・ファイトが始まりました。一番目立って発言し続けたのが、中国です。まずはアジェンダの元はどこか、という質問から入り、その後はアジェンダの内容を重箱の隅をつつくように、しかも全て関連づけずつおかしいとの議論を展開。これに対して、同じ途上国であり島嶼国連合(AOSIS)でもあるグレナダからは、「よくそこまで遡って議論が展開できるものだ」という皮肉とともに、迅速にアジェンダの採択を求める発言が出されました。それでも、全く治まる様子はなく、マイク独占状態での展開。そこで同じく島嶼国連合のバルバドスより、「2020年に向け、我々は大変な状況に瀕している。時間がない中、とにかく前に進め、サブスタンスを話さなければとんでもない手遅れになる」という発言をしたところ、会場は拍手喝采に包まれました。すると、中国は「国連という場は、各国が言いたいことを言う場であるべきだから、一つの国を非難するような発言は、二度と許されてはいけない!」と逆切れ。驚いたことに、この発言にも会場中から大きな拍手が起こりました。びっくりして周りを見回すと、ものすごい数の中国代表団の方たちがいらっしゃって、拍手をされていました。しかし、この発言は、他にも反対の発言をしている途上国があった中、自らの非を認める墓穴となり、すかさずスイスが「バルバドスの発言は決して一国に対する非難での発言ではない。」と、応酬されていました。 3時間半の間、フィリピンが妥協案を出したものの、その内容が緩和の野心を下げるものであるため、先進国が合意しなかったり、シンガポールがさらにCOP17に基づくという一文を入れることで全てがクリアになるという案を出し、多くの国が賛同したものの、結局中国が却下。最後は、「中国はフィリピン…

国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:ダーバン作業部会の議長が決まらない

気候変動ディレクターのYです。現地時間17日(水)から開会した、ダーバンプラットフォーム作業部会(ADP)。ご存知の方も多いと思いますが、ダーバンプラットフォームとは、昨年の12月に南アフリカのダーバンで会議を約2日間も延長してやっと合意に至った、全世界で気候変動に取り組んでいくための新たな気候変動条約の枠組みです。2015年までに内容を合意し、各国が法的手続きを整え、2020年に全世界規模で発効することを目指しています。アメリカやインド、中国、日本も、参加する前提で発足した枠組みです。 ところが、昨日より開会したADPで何とも困った現象が起きています。会議開始の時点で決定しているはずの議長選が、もめにもめ、未だに決定していないのです。このため、会議の本題はおろか、アジェンダの決定にすら入ることができません。 現在、違う地域から推薦された、3名の候補者の方が立候補しています。本日になって、ひとまず会議を名目上でも開催するために、事務局命を受け、副議長の方が議長席に座りました。そこから、各国の激しい応酬が始まりました。特にすごかったのが、中国。後から数えてみたら、1時間半程の会議で8回も発言していました。中国の主張は、地域的バランスからみて、アジアグループは一番国数が多いのに、LCAなどの議長を経験した回数が5回と、アフリカグループの15回に比べ、少なすぎる。だからこそ、公平性の観点から、アジアの候補者に優先権があるべきだ、と同じことを何度も何度も繰り返していました。この理由は、後ほどアジアグループからの候補者がどこの国の方であるかで、分かると思います。 この発言に対し、副議長の方は、「ADPの議長は、選出された地域のために仕事をするのではない。UNFCCC、いや、地球の未来のために議長の仕事に従事するのだ」と返し、会場は割れんばかりの拍手がしばらく鳴りやまない状況に陥りました。その後、彼は「ここで喝采を受けるための発言ではなかった、当然のことを言ったのみである。申し訳ない」と付け加え、淡々と会議を続けました。私は個人的にも是非ADPの議長には小島嶼国連合(AOSIS)の方に就任して頂き、停滞している気候変動条約を牽引して頂きたいと思っています。国家の存続事態に瀕しているAOSISは、とにかく気候変動交渉をより野心的に迅速に進めるために、その多くが最貧国を含む途上…

国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:「森林減少の要因」サイドイベント開催!

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気候変動プログラム・ディレクターのYです。今日の交渉は全てにおいて停滞気味だったので、気分を一新し、現地時間17日(木)の夜にCIが開催した「森林減少の要因(ドライバーと呼びます)」のワークショップについて報告します。正確には、昨日の私は、このサイドイベントを成功裏に終わらせるため奔走していました。 今回のSBSTAのREDD+の議題の一つである、「森林減少のドライバー」。つまり、途上国の森林が減少するの原因が何であり、誰が関わっているかを検討し、対応策を検討する、というものです。現場での実践に基づき政策提言を行うCIとしては、「ドライバー」の特定とは、REDD+のみならず、全てのプロジェクト計画のまさに基礎となるもの。対処方法は、国家政策の改善や現地コミュニティが森林を伐採しなくてもすむための代替生計手段の開発等、地域によって様々です。今後のREDD+への対応策を協議する上でも、今回SBSTAで重要な協議事項の一つとなっています。 さて、今回のサイドイベントでは、様々なNGOからの発表に加え、昨年度CIジャパンが地球環境センター(GEC)を通じ受託した環境省の「新メカニズム実現可能性調査」として実施した調査の一環である「カンボジア・プレイロング地域の森林減少ドライバー・ワークショップ」の結果を、カンボジア政府森林局のオマリス・ケオ博士にご発表頂きました。オマリスさんは、カンボジアのREDD+フォーカル・ポイントとして調査の全般にご協力を頂いた、心強きパートナーです。昨年度、私は本調査のためカンボジアを3回訪れた他、森林生態系を専門とする同僚はカンボジア人さえなかなか踏み入れることのない森林地域の調査にみっちり2週間以上入りました。 しかーし!UNFCCCのサイドイベントは、申し込む段階で日時を指定できないため、木曜日の20時―21時半という最悪のスロット。さらに運が悪いことに、全く同じ時間に、クローズドで進んでいるREDD+のドラフティング・グループと呼ばれる交渉テキストのドラフト作業が決定してしまい、REDD+担当の交渉官のほとんどがこれなくなってしまいました。たくさんの方々がこのイベントに来てくれるはずだったのに~!!!それでも、意外に盛況のサイドイベントで、ほっとしました。
・写真:発表を始めるカンボジア政府森林局のオマリス・ケオ博士 NGOに交じってたっ…

国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:交渉2日目にて、LCA交渉スタック

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気候変動プログラム・ディレクターのYです。昨日、いきなり「条約の下での長期的協力の行動のための第15回特別作業部会(AWG-LCA15)」で各国の主張が折り合わず、会議がスタックしました。国連の会合の慣習として、午前中は今回より議長に就任したサウジアラビアの議長への謝辞や支援表明などが延々と続く中、スイスが「一般的な発言に留めるべきか、アジェンダに関して言及すべきか」と、一度牽制を入れました。議長は、「ひとまず一般的な発言で、アジェンダに関する発言は後で」と指示しました。午後からのLCAがもめそうな気配が会場に漂い始めました。 LCAは2012年中に閉会し、「ダーバンプラットフォーム作業部会」に移行していくことが前提とされていますが、実はそう簡単にはいかないことが以前より予測されていました。というのも、そもそも条約の根本的な目標ともいえる「共有ビジョン」など、いくつかの重要なアジェンダについて、COP17で合意することができず、持ちこされていたからです。 会場は、COP17で引き続き議論することが合意されている事項のみを協議すべきだという米国等を中心とした先進国と、議長案に書かれている、一部バリ行動計画を含む内容を再度協議すべきだという意見で割れました。多くの国の発言が続き、予定を大幅にオーバーする中、珍しくLCAチェアが「自分の物語を聞いてほしい」と、長々と語りべを始めました。 あまりにも長かったので、かいつまみます。昔々多くの人々がバリ・アクション計画という名の家を建てようと、タウン・コミュニティを作りあげた。一方、多くの人々の思惑が交錯し、フロアプランが決まらない中、タウン・コミュニティから離れていく人々も出始めた。2年以上という時間がたった今、状況が全く変わってしまった。今こそ、残された課題を全て解決し、話し合い共同で家を建てるための最後のチャンス。みんなで各アジェンダについて話す場を設けようではないか、どうか協力して欲しい。 この物語への感想として、米国のパーシング米気候変動副特使が、すかさず「2年という期間が過ぎてしまった家作り計画は、個人がそれぞれ街づくり自体についても違うアイディアをどんどん考案し、ホテルを建設したいと考えている人もいるはず。現実的な方法で前に進むべき」とばっさり。 シンガポールの交渉官が折衷案として提案した「COP17で決定してい…

国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:会合開幕!

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気候変動プログラム・ディレクターのYです。5月14日(月)から同25(金)にかけてボン(ドイツ)で開催される気候変動枠組み条約会議(UNFCCC)に参加しています。今回のボン会合では、交渉が大きく分けても4つのトラックに分かれて進行されます。このため、日本など、多くの交渉官が参加する先進国に比べ、数少ない気候変動交渉官で全てを対応しなければいけない途上国は、既に会議参加のスケジューリングに大わらわです。ややマニアックではありますが、その4つの会議を説明します。
1.科学的な知見から対応策を協議する「気候変動枠組条約第36回補助機関会合(SB36)」。 2.SBからの報告を受け、正式に長期的な行動に向けた交渉文書を決定していく「条約の下での長期的協力の行動のための第15回特別作業部会(AWG-LCA15)」。 3.日本が昨年のダーバンで開催されたCOP17で第2約束期間からの離脱を表明した京都議定書に関わる「京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する第17回特別作業部会(AWG-KP17)」。 4.昨年のCOP17で誕生した、全世界の参加を前提に2015年までに合意、2020年に発効を目指す「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」、です。
実は、「長期的協力の行動(LCA)」は、2012年中にクローズされることが前提とされています。そして、昨年のCOP17で合意した「ダーバン合意」の具体的な交渉に移行していく、というのが本来の筋書きですが、そう簡単に交渉が進むものか、誰も分かりません。「ダーバン・プラットフォーム作業部会」に関しては、合意されたばかりであるため、法的枠組みを議論するよりも、まずは今後全世界で気候変動に立ち向かっていくための新規枠組みについて、ワークショップ形式で情報交換をしようという意向のようで、アジェンダもワークショップ形式で組まれています。 昨年のCOP17では、全世界が合意しなければいけない国連の枠組みで気候変動を交渉していくことの「限界説」まで出ていました。これからこの4つのトラックがどのような波及効果をお互いに与えながら、交渉が進んでいくことになるのか。途上国の森林減少や気候変動の影響により貧困が進む現場を見続けてきた私としては、地球の未来に向け迅速な対応が求められる中、毎回交渉のスピード感の遅さに気落ちすることも否めま…

南米ペルー・アルトマヨ森林保護区を訪問して:その3

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Yasuです。ペルー出張報告の最終回です。
今回訪れたAlto Mayoは、非常に豊かかつユニークな熱帯の森林生態系ですが、太平洋側での人口増化と農地の逼迫、そして前にも書いたパシフィック・ハイウェイの影響で、ここ10数年の間に急速に入植が進み、それに伴って森林の農地への転換が進んでしまっています。森林が保護区下される前に入植した人たちもいるので、国立公園内に人が住んでいるような状況にもなってしまっています(実は途上国では、よく見られる現実です。)
言うまでもなく、入植者の多くは貧困からの脱却を目指してこの地に来てる人が多いわけですが、特に90年代は、コカインの原料となるコカ栽培に関わる人が多かったのも、この地の問題を複雑にしてきた要因のひとつのようです。現在は政府の指導と規制でコカ栽培は減っているようですが、この地域は、近年の気候変動の影響か、2000m以上の標高でもコーヒー栽培が可能となってきていて、今度は森林のコーヒー農園への転換が急速に進んでいるのです。また入植者増加の傾向が続くことを見越したいわゆる「地上げ(Land trafficking, land rush, land grabなど言われる)」も横行するなど森林破壊の種はつきません。
↓農地への転換によってすっかり破壊された熱帯林。後ろには、まだ原生林が残っているけれど、この地での人口増加率を考えれば、保全の取り組みは急務だ↓
そんな中で、私たちの同僚であるCI Peruチームが、ペルー政府、国立公園事務所、現地の農協やコミュニティと取り組んでいるのが、AltoMayo森林保護区プログラムです。プロジェクトでなく、プログラムと呼ぶのは、非常に包括的な内容になっているからです。 ざくっと内容を紹介すると、、、森林生態系の調査、保護区管理計画の策定支援、管理事務所の建設とパークレンジャーの育成と雇用、コミュニティを対象とした環境教育・啓発、コミュニティへの高効率の調理用ストーブの提供(薪炭目的の森林伐採圧力の緩和)、日陰栽培を柱としたサステナブルなコーヒー農法技術や有機肥料、マイクロクレジット(小規模融資)の提供、農作物の市場アクセスとマーケティング支援、ソーシャル・フォレストリー(社会林業)やアグロフォレストリーの手法による森林再生(再植林)など、非常に多岐に渡っています。
このプログラムの肝は、…

南米ペルー・アルトマヨ森林保護区を訪問して:その2

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Yasuです。ペルー出張報告その2です。

さて、今回の出張のもうひとつの目的は、ペルー中北部のアルトマヨ森林保護区とその周辺を訪問することでした。ペルーは、熱帯アンデス http://www.conservation.org/global/japan/priority_areas/hotspots/south-america/Pages/Tropical-Andes.aspx とトゥンベス・チョコ・マグダレナ http://www.conservation.org/global/japan/priority_areas/hotspots/south-america/Pages/Tumbes-Choco-Magdalena.aspx の二つの生物多様性ホットスポットがアンデス山脈に沿って縦断していますが、今回の訪問地Alto Mayo森林保護区は、熱帯アンデス・ホットスポットにあって、アンデス山脈の東側、アマゾン河の最源流に位置しています。アクセスの基点となるのは、サンマーチン州の中核都市であるMoyobambaで、首都Limaから飛行機で1時間半ほどの州都Tarapotoから車で3時間余り。
↓TaratopoからMoyobambaへの車中。今回は、環境保全型のコーヒーのコスト分析の研究をしているUCLAのビジネススクールの学生も一緒です。

Moyobambaは、日本人移民の影響が意外と色濃い太平洋岸のLima(例えばそこら中にレベルの高い日本レストランがあるんです!)とはまた違って、アマゾンの最前線、農業の中核地、そしてフロンティアの雰囲気がある、なかなかエキゾチックなところ。

↓Moyobambaの街並み。アンデスの雲霧林がすぐそばまで迫っています。(街の雰囲気は、やはり森林保護区に隣接しつつも農産物の集積/交易拠点であるフィリピンのツゲガラオに似てるかも)


料理も豪快な肉のグリルに芋料理(アンデスは芋類の原産地で、種類は豊富だし当然ながら美味い!)やトウモロコシ料理(こちらも種類や料理法は極めて多様)を付け合わせたようなものが多いです。椰子の実の芯(? Palm heartと言っていた)のお造り?みたいなのも美味かった! アマゾン地方に多いOrmigasすなわち蟻の炒めものも、数年前にコロンビアで試して以来に頂きました(カリッと香ばしくて全然食べられるけど、歯の間…

南米ペルーのアルトマヨ森林保護区を訪問して:その1

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Yasuです。

2ヶ月ほど前になりますが、初めてペルーへ行きました。人はホスピタリティーに溢れ、食べ物は飛びっきり美味しく(美食大国といってもええんちゃう?!)、そしてもちろんマチュピチュをはじめとするインカ帝国やインカ以前の遺跡、スペイン征服・統治時代の街並など、ほんと見所も多くて、素晴らしい出張(はい、仕事です!)となりました。

今回の出張は、首都Limaで、CIの中南米各国事務所が一同に会し、グリーンエコノミーの構築を目指す上での来年度(CIの事業年度は、7月始まりです)の事業計画を作りあげることで、ブラジルやペルーなど日本とゆかりの深い国も多い地域ということで、僕もはるばる日本から参加したわけです。CIのフィールド・プログラム(現地で事業展開を担う各国現地事務所)の中でも、歴史があり、能力的にも非常に高いチームが揃ってるアメリカズ・リージョン(CIでは中南米をこう読んでいます)ということもあり、非常に建設的で効率的なディスカッションとなりました。来年度は、現場での取り組み(特に気候変動/REDD+、生態系への直接的支払い(PES: payment for ecosystem servicesの取り組みなど)を、いかに国および国際的な政策レベルでのインパクトに高めていくかということに力を集中することになります。

ちなみに、マチュピチュやクスコは、今回の出張と直接は関係なかったのですが、われわれが仕事をする国や地域の歴史や文化を理解することも重要、そしてせっかく遥々ペルーまで来たのに人類の遺産(というか世界遺産)を見ないのはいかがなものかということで、他のスタッフ数名と自腹を切って行って来た次第です。

クスコは、マチュピチュ観光の基点となる街ですが、インカ帝国の都が置かれていたところで、インカ時代の石垣や石壁の上に建てられたスペイン統治時代の街並が澄んだ青い空に映える、とにかく美しい街でした。また、郊外には巨大な石造りの遺跡なども残っており、インカ人の偉大さを身近に感じることが出来るところです。

↓インカ時代の石組みの上に建てられたスペイン統治時代のクスコの街並


マチュピチュは、言うまでもなく、空中都市の異名を取るインカ時代の宗教目的のために建設された都市です。空中都市のイメージから、非常に高い標高にあるのかと思っていたら(といっても、2400m以上あって、十分高いです…

CBD SBSTTA16 報告② 5月5日(土)

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  モントリオールで開催されている生物多様性条約のSBSTTAに参加している生態系政策マネージャーのNです。前回の投稿で最初の報告を載せました。逐次追加の報告をしていこうと思っていましたが、今日、最終日です。昨晩までの議論で、SBSTTAからCOPへ送られる文書は(ほぼ)合意されています。全体会合で最後の議論がされているのを聞きながら、今週のREDD+に関する交渉について報告します。
FoCは火曜日夜に1回、水曜日昼と夜の2回、木曜日の昼に1回、計4回開かれました。議論が収束しない点について、さらに小さなグループで机を囲んで、プロジェクターで投影しながら文書が作成されました(ドラフティング・グループ)。その結果、CRP(Conference Room Paper)が木曜日の夕方にでき、作業グループで議論されました。内容が後ろ向きだったらNGOとして共同で発言しようと、こちらに来ているバードライフインターナショナルとWWFの政策担当の人たちと文案をつくり作業グループに臨みました。
ドラフティング・グループでかなり議論と妥協が尽くされた様子で、作業グループでは昨日までの対立主張が投げ交わされる状況から一転、非常に建設的な議論がなされました。どうしても解決しないと分かっている内容についてはもう議論されませんでしたが、妥協や解決できる点については合意ができ、悪くない文書だと思います。用意していた共同発言(joint intervention)は行いませんでした。10月のCOPまでに大切な宿題が含まれています(下記)←これがあるから悪くないと思っています。
①で報告しましたが、既存のセーフガード・イニシアティブについて個別に言及することは削除されましたが、既存のイニシアティブに留意することと書くことで、間接的ではありますが趣旨は残されました。また、これらのイニシアティブを進める組織や用意のある国に対し、途上国が生物多様性に関する懸念事項や多面的便益を実現する支援を促す文章も残されました。
REDD+を進めて森林から別の生態系に影響が出ることを防ぐために、包括的な土地利用計画をするという点について、国際的なスタンダードで選ばれた重要地域(KBAなど)の保全を優先することを考慮すべき、という点を主張してきましたが、全く反対意見が無く、最終文書に盛り込まれました。
【COP11…

CBD SBSTTA16 報告① 5月2日(水)

モントリオールで開催されている生物多様性条約のSBSTTAに参加している生態系政策マネージャーのNです。議論の簡単に報告していきたいと思います。
今回の会合のCIとしての最大の関心事は気候変動と生物多様性、特にREDD+と生物多様性に関する議論です。この議題は、4/30夕方から作業グループで議論が始まり、昨晩(5/2)にはFriends of the Chair会合(FoC)がありました。FoCは、意見の相違がみられる内容について、関係する締約国が小グループで議論する会議のことです。議長から参加が求められた国に加え、関心がある国・人は自由に参加できます。
昨晩の議論は、REDD+のセーフガードと効果を測る仕組みに関する文書(SBSTTA/16/8)についてでした。主な対立点は。。。。 パラ7:必要に応じて生物多様性と先住民族・地元住民に関する既存のセーフガードイニシアティブを参考に、UNFCCCで合意されたセーフガードを実現すること(UN-REDD、FCPF、REDD+ SES) →具体的なイニシアティブを示すことでスコープが狭められたり、すでに進んでいる国内での取組が束縛されることを嫌う国が、既存のイニシアティブへの言及を削除するよう求めたのに対し、各国での取組のガイダンスとして有益なために言及を残すことを主張する意見がある。REDD+ SESはCIが深く関わっていますし、具体的な事例もあるものなので、言及を残すように働きかけたいです。
パラ8:上記のイニシアティブを進める組織は、途上国でのREDD+における生物多様性と多面的便益の取組を進め、セーフガード枠組の確立の支援を奨励する →パラ7に関連して、削除されるかもしれません。
パラ9:FAOと連携して、Global Forest Resources Assessmentから条約の実行に有益な情報が得られるよう、事務局がFAOと連携することを求める →具体的にFAOの取組に触れることを避けたい意見と、有益な情報源になり得る取組を有効に活用しない手はない、という主張の対立です。
パラ10:8条j項に関する作業グループに、REDD+が起こす可能性があるリスクについて、対策を視野に検討することを求める →8条j項に関する作業グループでの議論が進行中なので、それがまとまってから追加作業を求めるべき、という順番の整理の観点(といっていました…