OHI目標解説その1 「観光とレクリエーション」

生態系政策マネージャーのNです。
先日発表された「海洋健全度指数(Ocean Health Index:OHI)」の10の目標を、今日から複数回にわたり、解説していきます。私は「観光およびレクリエーション」、「場所のイメージ」、「生物多様性」の説明を担当します。どれも数値化するのが難しいものですが、
OHIでは、思い切って数値化しています。
今回は「観光およびレクリエーション」です。
10の目標の中で最も低い1点(100点満点中)という評価をされたため、興味を持っている人も多いのではないでしょうか?


現在、観光業は、世界のGDPの約10% を生み出しています。海にちなんだ観光は、
観光業の中でも最も急速に成長している分野です。美しい景観や多種多様な動物などを見るために、海へ来る人も多いでしょう。環境を利用した観光により経済を活性化することができると同時に、その環境を資本として維持し、より良いものにしていくことが地域の観光をさらに魅力的なものにしていきます。ゆえに、海の観光やレクリエーション利用は海の健全度の指標になるのです


それでは、一体どのように計算されているのでしょうか?

簡単にいうと、持続可能な形で海洋観光を楽しむ人が多いほど、スコアは高くなります。観光利用の程度は、総人口に対する「海岸地域」への観光客数と平均滞在日数の積で指標されています。海岸地域への観光客の指標は、海外から観光目的で海岸地域に来る人の数ですが、海岸地域に来る人の数は、海岸線から80㎞以内に住む人口に比例すると仮定しています。(当然、国内観光も考慮すべきですが、全世界を対象にした国内旅行客の統計はないので、対象にしていません。)つまり、国際観光客が多く、海岸沿いに人が多い場合、この目標のスコアが高くなります。持続可能な形で海洋を観光利用しているかどうかは世界経済フォーラムのTravel and Tourism Competitive Index (TTCI)で表しています。

言葉はいいから、式を!という人のために、
x=log[(海岸地域への観光客数)×(平均滞在日数)/(総人口)×(持続可能性の指数=TTCI)+1] です。

こう計算すると、非常に幅の大きな指標になるので、スコアのトップ10%をすべて満点として、その他の国をトップ10%と比較してそれぞれのスコアを決めています。これにレジリエンスやプレッシャーの強弱で修正が加わり、最終的なスコアになります。

このように計算されるため、面積が大きく、内陸部に多くの人が住む国(たとえば中国やアメリカ)はスコアが低くなってしまいます。また、国際観光客が少ない国や、観光客の滞在日数が短い国(物価も影響するでしょう)も、スコアが低くなります。海洋の関係利用と関係が薄い理由でスコアが上下するのは、今後改善していく必要があるかもしれません。他の国と比較すると問題があるかもしれませんが、ある国(たとえば日本)の経年変化を追うことはできるはずです。

確かに、課題は多いですね。しかし私は、観光とレクリエーションをこのように数値化を試みたことが重要だと思っています。数値化されなければ、重要なこととして考慮されません。少々乱暴でも指標を開発したことで、評価のツールができましたし、具体的にどう改善していくべきか(海洋に対する行動も、指標の構造も)もわかります。

今回発表されたOHIは、世界全体を押し並べて評価するために、世界全体である程度そろっているデータしか使っていません。同様な考え方で日本国内を評価することも可能ですが、その場合、もっとたくさんのデータを使って精度の高い評価をすることができるかもしれません。おもしろそうだと思いませんか?

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