【UNFCCC COP18】:LCAの着地点は?

  気候変動プログラム・ディレクターのYです。COP18に入って交渉5日目、現地時間金曜日を迎えています。現時点で、既に多くの会議がクローズドに突入、密室会議が進行しています。私が追っているテーマの一つである「途上国の森林の減少と劣化に由来する排出の削減(REDD+)」に関しても、「条約の下での長期的協力の行動のための第15-2回特別作業部会(AWG-LCA15-2)」と、「科学的な知見から対応策を協議する「気候変動枠組条約第37回補助機関会合(SB37)」で一回ずつ公開の会議が行われましたが、その後はすぐにクローズの会議に。現在SBSTAでは、朝から晩まで各国の交渉官によるテキスト交渉が続いています。
REDD+は、森林地に住む地域社会や先住民族の権利を尊重しながら実施することが大前提であり、土地利用権やガバナンス等、多岐にわたる問題が複雑に絡むため、昨年まではAWG-LCANGOに対しても公開で進んできました。しかし、本年からは他のアジェンダと同様、最初の1回の公開セッション後は全てが密室会議に持ち込まれています。これについて、異論を唱える締約国もいましたが、くつがえすことはできませんでした。大変残念に思います。
 
LCAはあと1週間で結論を迎え、ADPへと引き継がれて行かなければいけないのですが、多くのアジェンダで途上国と先進国との意見が対立、交渉の遅れが見られます。また、今年はLCA議長をサウジアラビアの方が務めているのですが、遅れを挽回するために準備する「議長テキスト」がバリ行動計画に遡る傾向が強く、議長がテキストを準備することに多くの先進国が反発する、という異例の事態が起きています。今朝参加した「測定、報告、検証可能な先進国/途上国による適切な削減行動と数値目標」の会合では、途上国の議論に入ったところで、明日議長テキストが出されるとの通告がありました。とたんに、「今協議している事項に対して、いったいなぜ明日議長テキストが出るのか、テキストは締約国が話し合って作成すべき」と、多くの先進国が一斉に反発意見を述べていました。

その他のLCAも、混迷を極めています。この事態の打開に向けて、最低でも以下が必要と考えます。

1.先進国・途上国ともに、削減目標と野心の引き上げに積極的に取り組む姿勢を見せる

2.LCAの全てのアジェンダで課題となっているのが、ダーバンプラットフォームが開始する2020年はおろか、2013年以降の資金の目途が全く立っていない事と関連しています。先進国で資金コミットメントを発表する国は、おそらく来週の閣僚級会合をタイミングとして図っているのでしょう。しかし、それでは、議論が著しく遅れ、大切な議論のタイミングを逃してしまいます。昨年のように2日遅れでやっと合意に辿り着く、もしくは最悪の場合は、全くたどり着けないような事態につながりかねません。一刻も早く「気候変動問題のリーダーシップ」を取る国が、渇望されています。

日本は、2012年までの短期資金の40%以上を実施してきたとの実績をサイドイベントで発表しました。一方、京都議定書の第2約束期間不参加を表明していることからか、その実績を手放しで評価を表明する国の声が、なかなか聞かれません。この現実は、日本人として、正直悲しく思います。隣国である韓国は、今回のCOP18の誘致ではカタールに負けてしまいましたが、生物多様性条約の第12回締約国会議を誘致する事を決定しています。また、今後UNFCCCで途上国支援の資金源となる予定の「緑の気候基金(GCF)」の事務局の設置国としても、決定しています。経済的にも、外交的にも虎視眈眈とアジアでのリーダーシップを狙っているのが伝わってきます。環境問題において、様々な見地から、日本にさらなるリーダーシップを取る意欲を持ち続けてほしい、と切実に願います。




LCAのオープニングで演説するフィゲレス事務局長】

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