国連気候変動ボン会議 報告会の様子をレポート!

 こんにちは、インターンのTです。72日(水)、「国連気候変動ボン会議(SB40/ADP2-5)報告会~世界は2020年以降の新枠組み合意に向けて動いている~」に参加してきました。本報告会は、CIジャパンも参加している、日本で気候変動問題に関わるNGOのネットワーク組織「CAN Japan*が主催しました。当日は定員を大幅に越す220名余りの申し込みがあり、大盛況でした。

 今回の国連気候変動会議は、64日~15日にかけ、ドイツ・ボンで開催され、国連気候変動枠組条約の下で「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」と、2つの「補助機関会合(SB)」が行われました。報告会では、CIジャパンの山下加夏を含む、ボン会議に参加したNGOのメンバーが、交渉の進展と今後の気候変動対策における大切なポイントについて報告しました。また特別ゲストとして地球環境問題アナリストの末吉竹二郎氏をお迎えし、特別講演も行われました。

 CIジャパン副代表・気候変動プログラム・ディレクターの山下加夏は、「2020 年に向けた土地利用~森林減少・農業等~」と題し、発表を行いました。農業、森林減少、その他の土地利用に起因する温室効果ガス排出量は、全排出量の24%を占めています。また、その土地利用による排出の割合は低所得国になるほど顕著であり、低所得国の多くはアフリカやアジア地域など途上国に集中しているということでした。
【2020年の土地利用について発表するCIジャパンの山下】
© WWF ジャパン

このような状況の下、今回のADPでは初の土地利用の専門家会合が開催されました。現在、国連気候変動会議では2015年合意に「REDD+」や「農業」のアジェンダを含むことを前提に交渉が進んでいます。土地利用による排出削減のポテンシャルは高く、その費用対効果にも注目が集まっており、今回の専門家会合の開催に至りました。

科学および技術の助言に関する補助機関(SBSTA)で交渉が進んでいる「途上国の森林減少および劣化に由来する排出の削減(REDD)」に関しては、「非市場アプローチ」と「炭素以外の便益」について交渉が行われました。「非市場アプローチ」ではワークショップ形式の会合が開催され、REDD+の支援の様々な方法が共有された他、方法論・ガイダンス開発の有無が論点となりました。「炭素以外の便益」では、REDD+のセーフガードとの区別が論点となりました。

同じく、SBSTAにおける農業の交渉では、途上国にとっては、食糧保証・生計に直結する課題であるため、農業のアジェンダにおいては気候変動の「適応」について協議をすべきであり、「排出削減」を協議することに対しては強い抵抗がありました。今回の交渉では共通課題として、早期警告システム、リスクと脆弱性の分析、適応方法、食糧保障を促進する方法の4点が挙げられ、交渉の土台に合意することができました。

今後2015年合意に向けては、土地利用に対応するための方法論・枠組だけでは実行不可能であり、ガバナンス・能力開発など多様かつ包括的取り組みが重要となります。またそのためには、行政、市民、NGO、企業など多様なアクターとの橋渡しが求められるとのことでした。

 地球環境問題アナリストの末吉竹二郎氏からは「世界から取り残される日本の温暖化対策、これでよいのか?~温暖化がもたらすビジネスチャンスとリスクを考える」と題し、発表がありました。短期的視点から儲かる・損するという短絡的な思考ではなく、企業は今後のグローバルな競争で生き残るために必須となる、長期的視点に立った対策をすべきだと強く主張しました。地球が病んでしまえば、何のビジネスも生まれない。地球環境を保全しながら持続可能な方法でビジネスを展開する企業こそが今後生き残る、との強いメッセージに、会場から沢山の拍手が送られました。
【日本企業に気候変動対策を説く末吉竹二郎氏】
© WWF ジャパン
【会場との質疑応答の様子】
© WWFジャパン

*Climate Action Network JapanCAN-Japan)とは?

CAN Japanは、日本で気候変動問題に関わるNGOのネットワーク組織。国際交渉の前進や日本国内の気候変動対策の強化、日本の対外気候政策の健全化のために、国内で独自の活動を展開しています。

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