<イベントレポート>環境省主催「生物多様性民間参画シンポジウム〜生物多様性の主流化に向けた事業者の取組の推進〜」

インターンの長谷山陽大です。7月27日(月)に環境省主催の生物多様性民間参画シンポジウムin東京〜生物多様性の主流化に向けた事業者の取組の推進〜に出席してきました。

シンポジウムではIUCN日本委員会吉田正人会長や環境省生物多様性施策推進室の堀上室長による生物多様性に関するこれまでの動きや、味の素グループ、三井住友信託銀行、イオン、東芝、ソニーなど、生物多様性保全に積極的な企業から自社の取組みや戦略が紹介されました。また、UNDB-J委員長代理で東京都市大学環境学部教授涌井史郎氏をコーディネーターに迎え、スピーカーの方々と生物多様性の主流化に向けた事業者の取組みの推進についてパネルディスカッションが行われました。

以下一部企業の活動紹介とパネルディスカッションの様子を紹介します。

■味の素グループ
 味の素グループはサプライチェーン管理を通じた持続可能な調達の取組みの事例を紹介しました。新戦略として愛知ターゲット目標4:ビジネスと生物多様性に力を入れており、持続可能な生産を実現するため、味の素が事業で使用する自然資本の利用の影響を生態学的限界ではなく、安全な範囲内に抑えるための国際的なビジネスルール作りやビジネスモデルづくりに積極的に参加しているということです。

具体的な取組みとしては①農産資源(発行生産原料)サトウキビ、キャツサバ等のバイオサイクルを実施、②森林生態系資源の保全として認証パームオイル、紙を社会的に推進、③水産資源として太平洋沿岸カツオ目識放流共同調査への参画などが紹介されました。
味の素グループの自然資本保全への取組みの話を聞いて、従来のCSR(corporate social responsibility: 企業の社会的責任)という概念からより積極的な姿勢を意味するCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)への移行を感じました。スピーカー、杉本氏の言葉「企業活動は地球に優しいではなく、地球に正しいでなくてはならない」は、これからの企業に求められる価値観ではないかと思われます。

■東芝
 東芝からは”工場だからこそできる生物多様性保全活動”というテーマで、自社が進める工場内敷地を使った生物多様性保全の取組みが紹介されました。
2015年目標(生物多様性保全に向けたビオトープ実施率100%)達成に向けた施策として、グローバル主要拠点66箇所でビオトープを整備する取組みを紹介されました。工場内敷地はセキュリティーが確保されており、第三者による盗掘、乱獲や天敵、侵略的外来種からの食害リスクが少ないため、動植物の聖域として、生息環境が保護される機能があるとのことです。実際に愛媛県瀬戸市の工場では工場敷地内でギフチョウ(環境省RDB絶滅危惧種Ⅱ類)が産卵・羽化が確認され、横浜事業所では敷地内に自生するキンラン(環境省RDB絶滅危惧種Ⅱ類)の保護と人工授粉実験を行っていることが紹介されました。スピーカーの藤枝氏の「自社の取組は特別ではなく、どこでもできることなのでぜひ本日の内容を持ち帰って考えて欲しい」という言葉からは、企業同士のノウハウの共有という流れを感じました。

■電気・電子業界
 電気・電子業界を代表してSONYの勝田淳二氏が発表しました。
企業活動をどう生物多様性保全に関係させるか、いったい何をすればいいかなど、業界内の企業の声に応え、“LSB:Let’s Study 生物多様性“という国内外の動向などをわかりやすくまとめた映像ツールの開発事例を取り上げました。
また愛知目標に関わる業界の行動指針を紹介したほか、SONYの取組みとして“わお!わお!生物多様性プロジェクト”という自然体験プロジェクトの紹介が行われました。

■パネルディスカッッション
生物多様性の主流化に向けた事業者の取組みをいかに推進するか、パネルディスカッションが行われました。東芝の藤枝氏は自社の活動を発信していくことでそれがメディアを通して社員に伝わり工場社員のやる気に繋がったという事例を語りました。
また、イオングループは消費者に自社の取組みをどう知ってもらうかが大事だと語りました。
三井住友信託銀行の金井氏によると、企業として手段と範囲は重要でありそれが日本の企業に馴染むかが重要であるとという意見がありました。
また、先進国は企業にバリューを求めるが、途上国はプライスを求めるなど、地域間での感覚を理解することの大切さや、外部経済をいかに内部経済へ組み込むかという議論がなされました。
また、味の素の杉本氏から官民連携の重要性や行政が大中小企業問わず参画できる枠組みを作ることが必要、という意見がでました。
最後に吉田会長が、「日本と海外の土壌は違う、海外では悪い活動をした企業をたたけばそのNGOの会員は増えるが日本では全く違うことを語り、結論として、企業としてしっかりとした方針を持つことがグローバルでも評価される企業になるのではないか」とまとめました。

今回のシンポジウムに参加し、生物多様性についての国内企業の意識が高まっていること、また、CSRからCSVへの転換の流れを感じました。
こうした流れは、発表された大企業だけでなく、中小企業までどう生物多様性の主流化への動きに巻き込むかがこれからの課題ではないかと思います。

CIジャパン インターン
長谷山陽大

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