環境運動が反タバコ広告から学べること

※本ブログ記事は、CI本部の記事「What the environmental movement can learn from anti-smoking ads」を日本語にしたものです。

文: ADAM SCHOENBERG




持続可能なグローバル社会を構築するために、企業がグリーン製品やサービスの需要を高めることが重要です。-広告は鍵を握っているかもしれません。(© moxduul via istockphoto)




2000年代前半、米国で喫煙する若者の数が40%ほど減少しました。一般的なタバコに関する健康被害の知識には何も新しいものがないにも関わらず、この突然の減少はどうして起こったのでしょうか?

それにはたった一つのマーケティング・キャンペーンがこのシフトを引き起こしたのではないかと考えられています。

そして今、環境運動もこれに追従する時です。

このアイデアは、今年の夏、CIの創始者兼CEOのピーター・セリグマンと、Greenbizの総合監修者であり、マクドナルド社の前サステイナビリティ担当副会長のボブ・ランガート氏の討論を見たときに閃きました。

CIのビジネス・持続可能性委員会の年次会合で話されたこの議論は、なぜNGOが消費者の環境意識を高めることができていないのかという点と、さらに大事なことは、如何に企業とNGOがこの問題に対する解決策を戦略的に考え出さなければならないか、という点でした(ボブ・ランガート氏は、Greenbizのアースデイのブログでこの問題について言及しています)。




マーケティングの真実
より持続可能なグローバル社会を構築するためには、消費者が、自然が我々の日常においてどのような役割を果たしているか ~例えば自然生態系が水をろ過することや、継続的に食糧を提供してくれるしくみなど~について理解を深める必要があります。ランガード氏が指摘した点の一つは、一般消費者のサステイナビリティに関する関心は、多くの企業内で起こっている潮流から著しく遅れているという点です。私はこの点には同意ですが、だからといって、消費者の環境意識(全てのグリーンなものに対する興味)の低さに対する責任を、NGOコミュニティだけが負担すべきではありません。

2015年の広告への支出は、全世界で6千億ドル近くにのぼると予想されています。これは巷に膨大な量の情報を撒き散らします。それらを打ち破れるほどの資金なくては、最もクリエイティブなキャンペーンでさえ、十分な影響力を持つことができません。

我々は、マーケティング及び広告業界からのリーダーシップを必要としているのです。

サステイナビリティな文化へ真に転換するためには、2000年代に実施された若年層向けの禁煙キャンペーンと同じくらいインパクトを持つものが必要です。このキャンペーンは、米国の5大タバコ会社と46以上の州との間で結ばれた基本和解合意(Master Settlement Agreement)の一環として開始されたものです。この和解により、タバコの規制のための全国的な公衆衛生団体として米国レガシー財団が設立され、多くの資金が投入されました。

同財団は、喫煙に対する人々の姿勢を変えるための「Truth」キャンペーンという長期のマーケティング運動を開始しました。このキャンペーンの最初の数年間は1億ドルのメディア予算によって賄われ、その他の公衆教育活動にも追加の予算がつけられました。同キャンペーンは有名広告代理店によって企画・実施され、2000年代前半の若年層の喫煙率に大きな影響を及ぼしたと言われています。




この雑誌広告は2000年代初頭の喫煙についての態度を変えるための米国レガシー財団の強力な「Truth」キャンペーンの一環でした。(© Sean Dockery/Truth Campaign via Flickr Creative Commons)

我々が必要としているのは、「Truth」キャンペーンのサステイナビリティ版です。人々の地球への視点を変えるには、十分な時間と継続的な(NGOが用意できないような額の)資金が必要となります。これまでのNGOの典型的な消費者アウトリーチの方法は、公共広告を作り、この広告を午前2~5時というメディア企業の気まぐれで寄付されるような放送枠に頼って流すというようなものでした。




シンプルな解決法

CIのような団体は、主にドナーからの支援によって支えられていますが、ドナーは概して、効果が具体的に見えにくいもの、消費者の需要を変え、潜在的に大きな変化をもたらす可能性を持つ広告やマーケティングの活動よりも、きれいな水をコミュニティへもたらすことや、保護地域の森林破壊をくい止めるような、現場での活動に寄付金が使われることを望みます。これに対して企業は、日々の業務として消費者の需要を喚起したり、購買意識を促進することを行っており、こうした啓発活動は企業のDNAに組み込まれていると言えます。

我々は、クリエイティブが社会に反響を及ぼすことを知りましたが、環境コミュニティが現実的な影響力を持つためには、こうしたクリエイティブなメッセージや取り組みを主流メディアで継続的に実行するための膨大な資金が必要です。それは個別的アプローチでは成り立たず、一貫したコンセプトをもつクリエイティブを開発し、有料広告、スポンサーシップ、その他の継続的なプロモーションに資金を投入する必要があります。

CIは、こうしたキャンペーンの先駆けとなる、「Nature Is Speaking」キャンペーンを開始しました。同キャンペーンは、自然は人間を必要としないが、人間は自然を必要とするというメッセージを強調する一連のショートフィルムで、ハリウッドの豪華俳優人がナレーションを担当しています。TBWA/Media Arts Labとの共同で作られたこのキャンペーンは、20億ものインプレッションを生み出し、これらのショートフィルムは米国、中国、香港、そしてブラジルにおいて3,000万回視聴されました。6月には、シリーズの一つである「The Ocean」がカンヌ映画祭でゴールデン・ライオン賞を受賞しました。
(© Conservation International)


我々の次の挑戦は、このキャンペーンを推し進めるためのしくみを持続可能な方法で構築していくことです。

そこで私は、「Truth」キャンペーンにインスパイアされた一つのシンプルな解決法を提案します。もちろん、「Truth」キャンペーンがしたような訴訟はせずに!

米国の広告スポンサーのトップ100社は、マーケティングに年間1,900億ドルを使っています。これら企業のうち、ごく一部の会社でもほんの少しのマーケティング予算をグリーンな製品・サービスに対する需要喚起のために使うことが結果的に彼らの賢明な策となることにもし気づくことができたら、我々はボブ・ランガート氏が提示した課題を実現でき、サステイナビリティの文化を形成することが可能になるかもしれません。

翻訳協力:富永 文彦

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