【気候変動:COP21特集ブログシリーズ(3)】
REDD+の準備は整った?:CIのREDD+専門家、スティーブン・パンフィルへの3つの質問

「自然を活用した気候変動対策(nature-based solutions)」は、気候変動の緩和と適応の両方に有効です。前回のブログシリーズでは適応策を取り上げましたが、今回は自然の力を活用した緩和策に着目します。最近の研究によると、2度以下に気温上昇を抑えるために必要な排出削減の30%は、自然の力を活用して達成できるといわれています。しかし、そこに使われている資金はすべての気候変動対策資金の3%にすぎず、現状では潜在的な能力に見合った力を発揮できているとはいえません。

今回は、【気候変動:COP21特集ブログシリーズ】の第3弾として、自然を活用した緩和策の一つである「森林の減少と劣化に由来する排出の削減(REDD+)」を取り上げます。CIのREDD+専門家であるスティーブン・パンフィルが、COP21交渉におけるREDD+の扱いやCOP後に必要となるアクションなどを解説します。

※以下のブログ記事は、CI本部の記事「Ready for REDD? 3 questions about forests and climate change for Steven Panfil」を日本語にしたものです。文:CASSANDRA KANE


インドネシアのグヌング・パルン国立公園の周りで、違法伐採による森林減少をオフセットするために植林する苗を手にした男性(© Christopher Beauchamp/Aurora Photos)
木を切るのをやめて、気候変動を止める?物事はそれほど単純ではありませんが、世界の温室効果ガスの10分の1以上の排出源となっている森林の減少をとめれば、世界の平均気温の上昇と気候変動の影響を抑えることができます。

世界のリーダーたちが気候変動対策への最終合意を目指してパリに集まっています。そこでは、REDD+として知られる「自然を活用した緩和策」は重要な位置づけを占めるものである、とのモメンタムが出来上がっています。COP21の初日に、ドイツ、ノルウェー、イギリス政府が2020年までにREDD+への支援を拡大するために50億ドルをコミットしました。「森林の減少と劣化に由来する排出の削減」の短縮形と、森林の保全と持続可能な管理という追加的な特徴を表す「+」を合わせた「REDD+」は、コミュニティや地域、国が手付かずの森を守り、森林減少による炭素の排出を防ぐ資金的なインセンティブを提供します。

REDD+は最終的な気候変動合意でどのような役割を果たすのでしょうか。そして私たちはどのよにその活動資金をまかなうのでしょうか。CIのREDD+に関する技術アドバイザーであるスティーブン・パンフィルに話を聞きました。

質問:研究結果によると、2度以下に気温上昇を抑えるために必要な排出削減の30%は、自然の力を活用して達成できるといわれています。森林の役割と自然を活用した緩和策について説明してもらえますか。REDD+はそこにどう関わるのでしょうか。

回答:木を切ると大量の炭素が排出され、木が成長すると炭素を固定するので、気候変動対策を成功させるためには熱帯雨林を保全することが重要です。REDD+では、生えている木に経済的な価値を与えることで、途上国による森林の利用方法を変えることができます。従来、森林は農業のために切り開かれてきました。なぜなら、木を切らずに残すことによる経済的な価値がほとんどなかったからです。REDD+が森林に価値を与えられれば、土地の開拓への考え方が変わるでしょう。

大気中よりも森林に、より多くの炭素が存在しています。そのため、木々や地中に固定されている炭素を大気中に排出せずそこに固定することは、気候変動を安全なレベルに維持するために重要です。もちろん、生物多様性や生計、水の流れの管理、木材や紙、非木材森林産物など、炭素以外にも私たちが木々を切らずにおきたい理由はたくさんあります。

新たな合意の大きな特徴は、全ての国が気候変動の原因を緩和し、その影響に適応するのに貢献するということです。インドネシアなど多くの途上国では、排出の多くが森林減少によるものです。世界規模での緩和努力に対して有意義な貢献を行うためには、これらの途上国が森林減少に取り組めるようにする必要があります。

REDD+は、ペルーのアルトマヨ保護林のような場所で既に成功をおさめています。REDD+を世界規模で機能させるためには、先進国は十分な量の予測可能な資金を確保する方法を見つけなければなりません。そうすれば、土地の所有者は、森を守れば経済的なリターンがあるということが分かるからです。CIは、先進国の政府に対して必要な資金の一部を拠出するよう働きかけていますが、必要な資金量を充たすには民間投資も必要と認識しています。

質問:COP21に至るまでのREDD+交渉の状況を教えて下さい。

回答:2007年に始まったREDD+の交渉は、2015年6月にドイツのボンで終了しました。そこでは、REDD+が社会的・環境的に責任のある形で実施されるのを確保するためのセーフガード、REDD+活動の非炭素便益、REDD+の代替的なアプローチについて合意しました。この合意をもって、REDD+のルールは全て整い、途上国がREDD+の活動を計画するに当たっての不確かさが減りました。

全ての国の間で、REDD+の役割が続くことへの幅広い期待があります。COP21初日に発表された、ドイツ、ノルウェー、イギリス、コロンビア間の協力はそれを証明しています(翻訳注:2015年11月30日、ドイツ、ノルウェー、イギリス政府は、REDD+の活動による排出削減結果に対する支払いなどのために、コロンビアに3億米ドルを供与すると発表しました)。今パリで交渉されているのは、新たな合意の中でどれだけ正式にREDD+を認識するかについてです。つまり、新たな合意の中でREDD+を今後の緩和策のオプションとして明示的に示すか、それとも明示的には書かずに含むかということです。

CIとしては、REDD+が合意に明示的に書かれることが必須とは考えていません。気候変動に対する野心的な活動は全てのセクターにおける多様な取り組みを必要とするからです。ただし、私たちは緩和と資金の議論においてREDD+を含むことが確保され、枠組み全体がREDD+にとって有効なものになることを望んでいます。パリ合意は今後数十年にわたって使われる文書にすることが目指されており、すぐ古くなってしまう細かい情報は入れるべきではないでしょう。基本的な原則を示すものの、法律に書かれるような詳細には立ち入らない、憲法のようなものののイメージです。より詳細な文言は、その後のCOP決定に書かれるでしょう。



ガイアナのクリブロン川にあるアマイラ滝。熱帯雨林は大気から炭素を吸収するのに加え、新鮮な水の流れを調整するなど、近隣及び遠方に住む人々に様々な恵みを提供しています。(© Pete Oxford/iLCP)
質問:パリ後はどうなるのでしょうか
回答:REDD+の方法論と一般的なアプローチが合意された今、先に進めるに当たって重要な課題はどのようにその支払いがなされるかです。言い換えれば、どうすれば、途上国が土地を切り開くのではなく、森林減少を抑えることを選べるようなインセンティブを作りだせるか、ということです。
インセンティブを作り出す一つの方法は、森林を守り回復するのは他の緩和手段より費用が安いという事実を生かすことです。私たちは、各国がREDD+のような自然を活用した緩和策を、個々の活動、そしてパリ合意への貢献の中で活用することを望みます。全ての国が野心的な排出削減目標を持てば、それらの国々は、国内そして海外でも排出を削減できるべきです。REDD+への投資は気候変動の影響を減らしつつ、地元の人々の生計と生物多様性にも貢献することができます。今後に向けて私たちが注目しているのは、各国が森林減少を止めるために適切なツールを持つこと、そしてその努力が報われることです。
私は全ての国が参加する合意ができると楽観視しています。でも、この合意を始動させるためには、今後5年間に多くの作業を必要とするでしょう。

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