マダガスカルの森林を守り育てる取り組み


絶滅危惧種のオオタケキツネザル
© Conservation International/photo by Russell A. Mittermeier
このプロジェクトは、トヨタ自動車株式会社のトヨタ環境活動助成プログラムの助成を受けて実施しています。

生物多様性の宝庫といわれるマダガスカル。実は、もともとあった森林の約9割は、既に失われています。ホットスポットの中のホットスポットです。残された森林は、野生生物にとって、まさに残された砦!特に、ある程度の規模で残る森林は、たくさんの個体が生息できるので、遺伝的多様性を維持する上で、とても重要な役割を果たしています。マダガスカルの南東部のアンボシトラ・ボンドロゾ森林コリドー保護区(長いので、略してCOFAV)は、数少ないそんな森林地帯の一つですが、そのCOFAVでも農地の拡大やそのための火入れの延焼という危機に直面しています。

私たちは、2015年1月から、コミュニティと共に森林を守り、育てるための取り組みを行っています。このブログでは、これまで1年間に実施してきた取り組みを紹介します。



環境教育

農業の様子
© Cristina Mittermeier
地球規模の気候変動は、マダガスカルでも降雨パターンを変化させつつあります。自然に頼る農業が暮らしの支えであるこの地域では、天候の不良は、生活の不安定化、森林の農地への転換(=温室効果ガスの排出)に直結します。気候変動にどう食い止め、そして適応していくか、この地域がまさに直面する課題です。プロジェクトでは、まずは気候変動についての知識を地元に広めるため、普及のための資料作りと指導者の育成を行っています。

指導の練習をする参加者
資料は、ポスター15種類とボキャブラリーカード48種類からなり、ゲームも取り入れながら参加者が気候変動について学べるように設計されています。2015年3月には、フィアナランツォアで指導者育成のためのトレーニング(Training of Trainers: ToT)が開催され、この地域で指導的立場にある20名以上が参加しました。

その後、早速、サハボンドロナナとアンベンドラナのコミュニティ組合からのToT参加者が指導者となって、それぞれの地区で気候変動についての勉強会が開催され、合計、90人ほどが参加しました。ポスターとボキャブラリーカード、そしてマニュアルは、各地区に配られた、地元からの要望に応えて、誰でも使えるよう、CIマダガスカルのフィアナランツォア事務所に置くことにしました。

森林再生

荒廃地での森林再生は、決して簡単ではありません。苗の生産技術や植林技術が進んでいるユーカリといった樹種であっても難しいのに、ましてや自生種。プロジェクトでは、この地域で100種以上の自生種を使った1000ヘクタール以上の荒廃地での森林再生を成功させた経験を持つ団体の助けを借りることにしました。

8日間のトレーニングには、地元の人々や森林局の職員も参加し、苗畑の管理方法や苗を作るための自生種の種子・実生・挿し木の集め方などについて、みっちり学びました。苗畑での苗生産は、順調に進み、約6千本の苗が育ち、植えられるのを待っています。

菌根菌の採取
苗畑の様子

トレーニングでは、以前にCIが作成した、森林再生に推奨される自生種のガイドラインも配布しました。また、参加者からの要望により、持続可能な生計手段に関するマニュアルも配布しました。農村部では、環境と人々の生活は切っても切り離せない関係にあります。

自生種のマニュアル
生計手段に関するマニュアル

トレーニングに参加した森林局は、この地域以外でも森林再生に取り組んでいます。今回、共有できた技術で、自生種を使った森林再生が広く普及しますように!



森林保全

COFAVは、政府とコミュニティで共同管理している保護区で、コミュニティは、それぞれが管轄する森林の保全を担っています。平均すると、約2000ヘクタールという広大な森林をを1つのコミュニティが管轄しているため、組織だった効率的なパトロールが必須です。

COFAVの森
© Conservation International/photo by Andriambolantsoa Rasolohery

実地訓練にいざ出発!
コミュニティは、これまでもパトロールを実施してきましたが、ブラッシュアップのため、2015年3月、パトロールに関するトレーニングを行いました。3つのコミュニティから15人が参加しました。GPS情報や伐採されていた樹種名などのパトロールシートへの記録漏れ、目撃された動物の写真が不鮮明、といった共通する課題が出され、それぞれについて改善策を確認しました。参加者を2チームに分け、実地訓練を行い、最後に振り返りを行いました。


パトロールでGPS情報を記録


トレーニングの後、コミュニティは、6月までに約3600ヘクタール、7月~12月に約4000ヘクタールをパトロールしました。500 m四方の方形区を設定しての丁寧なパトロールです。シートを確認したところ、以前に比べて記入漏れは減っていました。7月~10月は、乾季にあたり、森林火災のリスクが国中で高まる期間です。実際、この期間に多くの森林火災を目撃しましたが、コミュニティレンジャー達の努力により、プロジェクト対象地での森林火災は最小限に抑えることができました。







担当:浦口あや(政策・パートナーシップ シニアマネージャー)


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