GEF-Satoyamaプロジェクト レジリエンス指標トレーニング in タイ

みなさま、こんにちは。
広報の磯部です。

CIジャパンは、昨年9月より、人が生活し利用している環境で、生物多様性と生態系サービスの保全を通じて自然と共生する社会構築を目指す、「GEF-Satoyamaプロジェクト」を実施しており、3地域10ヶ国、10件のプロジェクトを支援しています。
自然環境やコミュニティーの能力開発は客観的な評価が難しいのですが、有効な方法のひとつとして、「レジリエンス指標(Indicators of Resilience)」を測定に使っています。

GEF-Satoyamaプロジェクトでは、インド-ビルマ、マダガスカルおよびインド洋諸島、熱帯アンデスの各3つの生物多様性ホットスポットでプロジェクトを支援して、具体的な事例を積み上げていくことがひとつの柱になっています。7月25日から27日の3日間、タイのチェンマイにおいて、インドビルマホットスポットのパートナーを対象に、「レジリエンス指標(Indicators of Resilience)」に関するトレーニングを開催しました。本トレーニングは、GEF-Satoyamaプロジェクトが取り組む能力構築の一環です。トレーニングには、タイ、インド、ベトナム、カンボジア、フィリピン、ミャンマーから合計27名が参加しました。


■1日目
IGES(地球環境戦略研究機関)の松本郁子氏とUNU-IAS(国連大学サステナビリティ高等研究所)のウィリアム・ダンバー氏をトレーナーに迎え、3日間をかけて参加者たちの能力向上をサポートしていきます。


IGESの松本さんとUNUのダンバー氏

参加者たちの今回の目標を書き出す

ワークショップの様子

まずはアイスブレイキング

初日は、参加者たちの自己紹介、そして、レジリエンス指標とは何なのか?どう使うのか?など、実際にいくつかの指標を参考に取り上げ、現地コミュニティにおいて、レジリエンス指標ワークショップを開催するためのレッスンが行われました。


レジリエンス指標のツールキット
ツールキットの中身

レジリエンス指標(Indicators of Resilience)とは、環境や社会情勢の変化に対し、コミュニティーが柔軟に対応できるために必要な次の20の項目からなっています。

1) ランドスケープおよびシースケープの多様性
2) 生態系保護
3) ランドスケープおよびシースケープでの生態学的関係
4) ランドスケープおよびシースケープの回復力
5) 地産食品の多様性
6) 作物および家畜の多様性
7) 共有資源の管理
8) 生産、保全活動のイノベーション
9) 生物多様性に関する伝統的知識
10) 生物多様性に関する知識の記録
11) 女性が持つ知識
12) 自然資源に関する権利
13) コミュニティによるランドスケープおよびシースケープのガバナンス
14) ランドスケープおよびシースケープにおける社会的協力
15) 社会的平等性
16) 社会資本
17) 環境条件と健康
18) 収入源の多様性
19) 生物多様性に基づく生計手段
20) 生産活動および生産場所の選択の可能性



■2日目
2日目は、先住民族カレン族のコミュニティを訪れ、1日目に学んだレジリエンス指標を使った評価を実際に行いました。カレン族が住んでいる村は、チェンマイから北部ミャンマー方面へさらに車で約2時間半をかけていったところにありました。

カレン族の村

事前にワークショップの進め方の講習を受けた地元のスタッフが、住民の代表者との議論をカレン語でファシリテートし、参加者は議論について通訳と解説を受けながら傍聴するという形式で、レジリエンス指標を使った評価のワークショップがどのように進められるかを身に付けるものです。

GEF-Satoyamaプロジェクトのパートナーである現地NGOのIMPECTの皆さんがカレン族とのセッションをコーディネートしてくれました。
カレン族の中には複数のコミュニティがあり、それぞれ違った土地利用をして生活しています。今回は、IMPECTがすでに保全プロジェクトを実施している、マエタエキー村、マエウンパイ村、マエヨッド村が、グループセッションに参加してくれました。



私たちが到着すると、カレン族の長老たちが歓迎の儀式を執り行って下さいました。私たちに幸福が訪れるように、といった意味のおまじないを唱えながら、手首に綿の紐を巻き、肩へも紐の輪を乗せてくれます。そして、終わりに部族のお酒を全員で順番に頂きました。

ワークショップでは、最初に、土地利用状況やコミュニティーにある様々な資源を、地図を描きながら把握するマッピング作業をします。

マッピング
 

そして、コミュニティの多様性やレジリエンス指標について意見を出し合いながら、各項目についてスコア化し、レジリエンスについての共通理解を深めていきます。スコアをつけるのは、あくまでも活発な意見を進め、強いところ、弱いところをグループで同じ認識で議論するための手段です。

そして最後には、コミュニティの土地利用をさらに持続可能なものにし、生産性を高めるための具体的なアクションプランが作成されました。



グループセッションには、カレン族の長老、若者、また女性も参加して、自由に意見を述べ合いました。


議論の結果はこのように記録されていきました

 
そして夜は、カルチュアルナイト!!集落の教会に集まり、民族の歌や踊りを披露してくれました。また、こちらの参加者も全員が自らの国を代表するものとして、歌や踊りを披露することになり、何も準備していかなったにもかかわらず、みなさん頑張りました。
(尚、日本チームは、坂本九さんの「上を向いて歩こう」を歌いました。笑)
IMPECTが司会進行


子供たちの踊り
カレン族の子供たち。ステージを真剣に(不思議そうに?)見つめています。

■3日目
カレン族の村に1泊した私たちは、早朝から散歩に出て、村で作っている様々な果物やワインセラーなどを見せてもらいました。

カレン族の管理している水田
カレン族には、年上を敬い、自然を敬い、文化を大切にするというスピリットがあります。丁寧に手入れされた水田、森林内で育つフォレストコーヒー、自然を汚すことのない栽培方法で作られた様々な果物やワインなど、自然を上手に利用し、自分たち用の食糧と少しの収入で成り立つ持続可能な生活モデルが、そこにあるように思いました。

カレン族のコミュニティ

フォレストコーヒー

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朝食後、私たちはチェンマイにもどり、IMPECTの事務所で最後のセッションを行いました。最終日のトレーニングは、レジリエンス指標評価後のリポーティングについてです。ドナーやパートナーへどのように報告するのが効果的なのか?また、指標の評価をどのように、プロジェクトのワークプランに組み込んでいくか?など、グループディスカッションが行われ、最後に各自のアクションプランを発表して、すべてのトレーニングプログラムは終了しました。



今回のトレーニングを通じて、参加者たちはレジリエンス指標に関して理解を深め、また、ファシリテーターとしてのスキルを向上しました。参加者からは総じて「持続可能な土地利用について大変勉強になった」「ぜひ自分たちのプロジェクトでもレジリエンス指標評価のセッションを進めたい」など、とても好評を頂き、私たちにとっても、今後3か所(ハワイのIUCN総会、マダガスカル・インド洋諸島ホットスポット、熱帯アンデスホットスポット)で同様に行われるトレーニングへの自信につながりました。


参加者の皆で記念撮影!



参加者の皆様、トレーナーの皆様、本当におつかれさまでした!


CIジャパン 磯部


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