“自然資本“とはなんだろう?

ガイアナ、ルプニュイの川で遊ぶマクシ族の少女(© Pete Oxford/iLCP)

エディターズノート:「気候適応」から「ブルーカーボン」、「ランドスケープアプローチ」から「生態系サービス」など、こうした環境用語は現在どこでも見られます。CI本部のブログ「ヒューマンネイチャー」では、そうしたよく見られる業界言葉について“What on Earth?”シリーズで解説しています。今回は、自然のあるべき形を180°変えることをも出来るコンセプト、“自然資本”についてお話します。


Q. まず、「自然資本」とは何でしょうか?

自然資本とは、人々に恵みをもたらす、再生可能と非再生可能な天然資源のことをいいます。(植物や生物、大気、水、土、鉱物など)

Q. どんな恵み(便益)がもたらされているのですか?私たちが吸う空気、私たちが飲む水、私たちが食べる食べ物、健全な生態系を維持している生き物たち、大気中の二酸化炭素を吸収して気候を調整している森林、これら全ては自然がもたらす恵み(便益)です。

Q. では「自然資本」とは単純に自然のことですか?かなり漠然としていますが・・・

では違う角度から考えてみましょう。想像してください、自然が銀行口座に預けている”預金”で人々が受益者とします。人々は預金運用から得られた利息(空気や、水、原材料、炭素貯蔵機能、気候や洪水を制御する力など)で生活するとします。もし、人々がたくさんの森林を伐採しすぎるなど、元本を消費し続けるならば、私たちへの配当が減っていくのはもちろん、時間と共に預金が利益を生み続ける能力も減っていくのが明らかでしょう。

Q. なるほど考え方はよく分かりました。しかし実際問題としてはどういうことなのでしょうか?

まず始めに、あなたは、自然から受ける恩恵の中で、何に一番自分が依存しているか、そして、その恩恵をもたらす生態系にあなたがどのように影響を与えているかを理解しなくてはなりません。そのことを理解するためには、便益や影響とは何か、誰が何のために便益を得ているのか、どのように便益が特定の利用者に流れているのかを理解することが必要です。


カリフォルニア、モス・ランディングの天然ガス発電所。地球上のどこでも、人々は自然資本に頼っています。(© Keith A. Ellenbogen)

自然資本の良い事例は熱帯地域にあります。熱帯雨林や湿地帯などを考えてみて下さい。そこには、炭素、野生生物、新鮮な水などの、世界最大の自然倉庫のような場所が多くあります。それらは、銀行預金の大部分を指し、利息が様々な利用者にどのように流れているか明らかにします。特定の利用者への利息の配分と流れを知ることは、利益と貯蓄を提供する元本の価値を把握するうえで重要です。最終的に、その価値を知ることは、経済発展の中における自然の重要な役割に対する政策立案者や意思決定者の理解を高め、公共、民間、金融セクターによる政策決定、管理方法に幅広い選択肢をもたらすことにつながります。

Q. 自然に値札をつけるーある種、冷たい感じがしますが・・・違いますか?

「私たちは長い間、自然からの恵みと自然が社会に与えてくれる価値を無視してきました。」とCIのムーアセンター経済チームの生態経済学者のローズマリー・ポーテラ博士は言います。「自然の恵み、例えば、私たちが呼吸する空気や水道の元になる水資源はこれまで当たり前だと考えられてきました。上水道の設備を運営するための費用である水道料金は払ったとしても、水そのものを”作り出す”自然の機能は見落とされていました。そして私たちは地球を再び蘇らすことができないほど消費してしまっています。」

限りある資源の世界では、多くの人々が、自然からもたらされる便益の価値評価は、自然からの貢献を生計や経済において見える化する方法だと考えています。このことは、市場を活用した保全活動を含め、際限のない消費から自然を守るために欠かせないより持続可能な選択肢を生みます。個人、企業、社会は自然に依存し、自然に影響を与えるので、自然の価値を築き上げることで、その便益についての説明し、時間と共に、自然からの恵みを長期に亘り社会が享受できる流れを確実に発展させることができるでしょう。

Q. ではなぜ企業は自然資本の会計をすべきなのですか?

価値を作り、それを発展させるには、全てのビジネスが効率的に、より良い意思決定を実行する必要があります。もしあなたが自然資本を意思決定に組み込んでいないなら、あなたはリスクと機会を逃しているかもしれません。

1つの例を取ってみましょう。もしあなたがコーヒ―会社だったら、あなたは安定して持続可能な高品質の豆を必要とします。そのようなコーヒー豆を調達するため、コーヒー生産に必要とする水や花粉媒介を、生産地周辺の環境に頼ることになります。もし中米の生産者が生産地環境を悪化させてしまったり、気候変動によりコーヒーの生産場所や方法が変化してしまったら、調達できるコーヒー豆の品質や量も変化してしまい、森林破壊を引き起こさない商品を買いたいと考える消費者を遠ざけることになるかもしれません。こうしたことががあなたの収益を侵す可能性のあるリスクなのです。

持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)が作成したこのビデオがこのことを簡潔にまとめています。






Q. なるほど。しかしどのようにビジネスの中で自然の価値を数値化するのですか。

まず、どの業界からもどのレベルからでも、全面的に照会できる標準化されたシステムが必要です。そこで”自然資本プロトコル”の出番です。

Q. ”自然資本プロトコル”とはなんでしょうか?

自然資本プロトコルは、自然資本への影響と依存度を測り、経営判断に活かすための標準化された枠組みです。WBCSD、コンサベーション・インターナショナル、国際自然保護連合、等が協力して発展させ、現在既にコカ・コーラ社、ダブ、ヒューゴ・ボス、グッチやプーマなどを傘下に持つフランスのケリング社、ネスレ、ロッシュグループ、シェルなど、50以上もの大手企業が使っています。

Q. 自然資本に価値を付けている会社の事例を教えてください。

自然資本の大事な一つである“水”からいくつかの興味深い例をあげましょう。スポーツアパレルメーカーのプーマは自社オペレーションから原材料の生産まで、サプライチェーン全体で使われている水の影響を測りました。自社が必要とする自然資本の測定と管理が可能であることは、プーマが、サプライチェーンのメーカーと協力しながら、水利用に関連する責任やコストを考え、より効率的に水を利用するプロダクトや新しい原料を検討し、環境へのインパクトを減らすことにつながりました。

コカ・コーラは、明らかに自然資本として水に依存しており、水不足はビジネスモデルへのリスクになります。その結果、コカ・コーラはどのくらいの水が自然へ戻るか計測する努力をし、さらに、水管理を改善して淡水生態系の保護にも努めています。コカ・コーラが目標としているのは、2020年までに生産する飲料製品に使われるのと同量の水を安全に自然へ戻すことです。2012年の時点で飲料水に使われた半分以上の水を戻すことが出来ました。

Q. 企業はどのように自然資本プロトコルを使っていくのでしょうか?

プロトコルと関連資料は自然資本コアリションのウェブ上で見ることが出来ます。ウェブサイトではビジネスが依存している、また、影響を与えている自然をどのように認識、計測、そして貨幣価値を付けるのか、説明しています。

「これはどのようなビジネスにも、どのような土地でも、どのような分野でも、最良の経営をすることができる、とても実用的な枠組みです。」とポーテラは言います。これらの枠組みに関する指標は、最初はビジネスによる自然資本への影響と依存度を測る独自の方法でしたが、現在はプロトコルとして可能になり、企業が自然との付き合いをより理解し、より良くために管理するために作られました。

Q. 次は何が起こるのですか?


ポーテラは、プロトコルの支持者は、より多くの企業が、自然への影響と依存を理解し、そしてそれに応じて行動することが企業の関心ごとになるだろうと確信している、と言います。

「これは、企業、学術機関、市民組織やその他のイニシアチブが共に、ビジネスがより良い自然の導き役となるために大事な道筋をつけることを目標とした世界的なムーブメントなのです。」

※本ブログ記事は2016年11月1日に投稿されたCI本部のブログ記事を和訳したものです。
http://blog.conservation.org/2016/07/what-on-earth-is-natural-capital/

投稿 : CIエディトリアル・ディレクター、ブルーノ・ヴァンダー・ヴェルデ
翻訳協力: 東海林優衣
編集: CIジャパン


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