54年にわたる環境保全の道のり

ピーター・セリグマン ワシントンDCにて(©Jeff Gale)

エディターズノート:ピーター・セリグマンは国際的な環境保全活動におけるレジェンドです。コンサベーション・インターナショナル(CI)の共同創設者、理事長兼CEOであったセリグマンは、CIを一つの想いから、世界で最も活動的な環境NGOのひとつへと成長させました。CIは30年以上77か国にわたって、地球で最も危機に瀕している6億ヘクタール(およそ600万㎢)以上もの陸や海の保全をサポートしてきました。これらの保護域は、宇宙からも見えるくらいの規模であり、インドネシア、メキシコ、そしてコンゴ民主共和国を合わせた大きさに匹敵します。セリグマンは今週、この取り組みをさらにけん引する新しいリーダーシップを発表しました。この記事では、彼が自身の歩んできた道のりを振り返り、すべての人々の幸せのための自然保護に関する新しい展望についてご紹介します。 


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 私の保全の道のり、そして政府機関の外で自分の力を発揮してみたいという強い思いは1963年に始まりました。その年の7月、私はワイオミングの農場で働いていました。私の仕事は、水を牧草地に引くことであり、濡れて泥だらけになって、水が水路を行き渡るのを待つというものでした。私は鳥や昆虫を観察し、風の音に耳を傾け、高草の優しさを知るようになったのです。私はその時、自分が自然に夢中になっていることに気づきました。

 同年11月、ジョン・F・ケネディが暗殺されたとき、私は周りの人々と同じように大きな気づきに直面しました。それは、ロバート・F・ケネディ、マルコムX、そしてキング牧師らの連続暗殺の始まりだったのです。私は父が泣いているのをはじめて見て、自分たちの国が完璧な民主主義だとしている教科書の記述はまやかしであり、私たちの生活は憎しみや利己心の上に立っているということに気づいたのです。

 1987年1月28日のCIの始まりは、計画的なものではありませんでした。私たちは何か新しいものを創り上げたい、と思っていたわけではありませんでしたが、どのように世界を持続可能なものにするか、当時の社会とは根本的に異なった考えを持っていたのです。私たちは、人々と自然が共生する広大なスケールの自然生態系に焦点を当てました。私たちは、国やコミュニティの運命のカギを握るのは外部ではなく、そこにいる住民であると信じていました。環境保全は、特に優れた科学を必要としていました。私たちは、開発途上国では彼らの経済的幸福を考えずに生物多様性保全を優先するべきではないし、そうすることもないだろうと考えました。


ラス・ミッターマイヤーとピーター・セリグマン コロンビアにて(©Jeff Gale)

 私たちはそういった考えの元、力を合わせました。世界に先駆け、応用保全科学に基づき生物多様性ホットスポットを選定し、環境スワップの手法を生み出し、初の非木材林産物事業、日陰で栽培できるコーヒー事業もはじめました。CIは、イノベーション、そして困難なことにも取り組む姿勢を文化として醸成してきました。だから私たちの合言葉は「Head in the Sky, Feet in the Mud」なのです。このように変革している間も、私たちは常に貧しかったです。たとえ減俸になったとしても、なんとかやってきました。なぜなら私たちは自分たちの仕事に人生を捧げていたのであり、組織のために犠牲を払う覚悟もできていたのです。

 2007年までに、CIはあらゆるパートナーとともに、赤道の周りを幅30マイルでぐるっと一周分ほどにあたるおよそ100万㎢の地を保護してきました。これは価値あることでしたが、私たちの計画は十分といえるものではありませんでした。地球儀を見たら30マイルの細長い土地というのは、南北を分けている点線と同じくらい狭いということにすぐに気づきます。これでは、私たちが苦労して成し遂げたとしても、地球のあちこちで起こっている大規模な環境破壊によって台無しになってしまう恐れがあります。自然が織りなしてきた世界は壊れてきていて、すべての国々や文化が危機にさらされていました。自分たちの使命、計画、そしてこの課題に立ち向かっていくための方法と技術を変えていかねばならないことははっきりしていました。

 私たちをサポートしてくださる方々や、パートナーの方々の素晴らしい関わりのおかげで、CIは、こうした課題に立ち向かうことができるようになりました。私たちは、国際的に力を合わせて変化を起こすことのできる新しい協力関係を探し求めました。そして、健全な生態系がいかに人々や事業、農家や国家に恩恵を与えてくれるかを示して、保護してきました。フェニックス諸島やスマトラ北部からブラジル中部やペルーのアンデスへ、私たちは人口増加の問題に取り組むと同時に、地球上で最も大切な生態系を抱えている、広く実用性のあるランドスケープやシースケープを保全することにも視野を広げました。


ピーター・セリグマン マダガスカルの茶色のキツネザルとともに(©Conservation International/photo by Russell A. Mittermeier)

 CIはここ数年、パリ協定や国連の持続可能な開発目標(SDGs)のような主要な国際条約において、自然の保全を手段の一つとして提唱することに成功してきました。映像製作やマーケティングを通して、世界の人々へ保全メッセージを伝えていく新しい方法を学びました。ワシントンD.C.では、自然保全とアメリカ経済や国家の安全保障のつながりを強調させることで、保全への投資および政策に関して二大政党からの支援を得てきました。そして、より大きな規模でこれからも保全を続けていくため、以前から約束していた先住民の人々や地域コミュニティとの連携を強化してきました。
 
 20年前、CIの取締役会に2人の素晴らしい方々が加わりました。ブラジルのカヤポ族の首長メガロン、そして『銃・病原菌・鉄』『文明崩壊』の著者であるジャレド・ダイアモンド博士です。ある取締役会議でジャレドはメガロンに、他のたくさんの文化が消えていってしまった中で、どのようにカヤポ族は残っていくことができたのか尋ねました。メガロンの答えは力強く、シンプルなものでした。「私たちは自分たちの森の戦士なのです」

 未来のことを思うと、私たちはみな自然の戦士にならなければなりません。立ち上がり当初から、CIは優れたサポーターやパートナー、そしてあなたのような仲間たちに頼ってきました。CIがここまで作り上げてきたつながりは、ひとつの未来であり、忍耐の証であり、強みです。私は、いつも油断せず、自分自身のすべきことも忘れずに、そして、自然のために声を上げてほしいと思います。あなたのように保全を訴える人々の支えと知恵があるから、私たちがこれから歩んでいく道は明るいものであると、私は信じています。

 この素晴らしい旅路において、今までの――そしてこれからも続けていくことのすべてに感謝します。

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ピーター・セリグマンはコンサベーション・インターナショナルの共同創設者兼CEOです。6月いっぱいでCEOを退き理事会長へ就任致します。



※本ブログ記事は2017年5月4日に投稿されたCI本部のブログ記事を和訳したものです。
”A 54-year conservation journey” By PETER SELIGMANN

翻訳協力:中島美紗子
編集:CIジャパン

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